講演情報

[II-P02-3-09]新生児心筋梗塞の1例

玉城 渉, 山本 雅樹 (高知大学医学部付属病院 小児科)
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キーワード:

新生児心筋梗塞、左室収縮不全、動脈管開存による右室循環

【背景】新生児心筋梗塞はまれな疾患で、致死率が高く、迅速な診断・治療を要する。【症例】在胎38週6日,3145g,Apgar Score 8点(5分)の予定帝王切開で出生した。生後5分から呻吟、SPO2低下が出現し、CPAPや用手換気でも改善がなく、人工呼吸器管理を行った。血液ガスでは、pH 7.087、PCO2 54.0 mmHg、HCO3 16.3 mmoL/L、B.E. -14.1 mmoL/L、Lac 9.4 mmoL/Lで、混合性アシドーシス、高乳酸血症を認めた。心エコーでは、動脈管血流の両方向性シャントと著明な左室収縮不全(EF18.5%)を認めた。徐々に、酸素100%でも酸素化維持が困難となり、右室圧上昇と右左シャントのみの動脈管血流所見から、PPHNと診断しNOを開始した。心エコー上、冠動脈起始異常は認めず、冠動脈の順行性血流も認めた。左室収縮不全に対してミルリノン、ドブタミンを開始した。さらに、右室収縮は良好なため、lipo-PGE1で動脈管を開存させ、右室循環で体血流の維持を行った。日齢1のCK 5,026 U/L、CK-MB 254 ng/mL、NT-proBNP 93,770 pg/mL、心筋トロポニンT 22.9 ng/mLと、日齢12の心電図のΙ,aVL,V5,6でabnormal Q波の所見から左室側壁-後壁の心筋梗塞と診断した。日齢38に抜管し、日齢40の心エコーでは、EF 20%程度で左室拡大を呈していた。日齢75にドブタミンを中止した。現在(日齢90)は、ミルリノンを漸減し、ピモペンダン内服と、カルベジロールを極少量から開始し漸増中である。【まとめ】稀であるが、心原性ショックを疑うような病態では新生児心筋梗塞も考慮すべきである。左室収縮不全に対する治療Optionとして動脈管開存による右室循環の体循環維持は有用であった。