講演情報
[II-P02-3-10]多血症の部分交換輸血後に判明した新生児心筋梗塞の一例
○坪谷 尚季, 岩朝 徹, 坂口 平馬, 津田 悦子, 黒嵜 健一 (国立循環器病研究センター小児循環器内科)
キーワード:
心筋梗塞、新生児、冠動脈
<背景> 新生児心筋梗塞は、新生児仮死や凝固異常に伴う冠動脈内血栓、冠動脈形成異常が原因となる本来予後不良かつ稀な疾患である。今回、我々は新生児多血症に対し部分交換輸血施行後に判明したが、比較的良好に経過した新生児心筋梗塞症例を経験した。<症例> 日齢1の女児。在胎34週2日、出生時体重1838gで仮死なく他院で出生。出生後、呼吸障害に対し気管内挿管し、血液検査で多血症(Hb 26g/dl、Hct 74%)と逸脱酵素の上昇を認めたため部分交換輸血を施行した。施行後、血圧低下し、心臓超音波検査で左室収縮低下を認めたため昇圧剤が開始となった。日齢1の血液検査で心筋逸脱酵素の上昇(TnI 11141pg/ml)、BNP651pg/mlが判明し、当院へ新生児搬送。12誘導心電図のV2-V3誘導でST上昇を認め、心室中隔壁運動異常を認めたが、大動脈造影では冠動脈の起始異常や途絶は認めなかった。心機能は回復傾向であったため、心筋梗塞の治療として抗凝固療法とカテコラミンの減量、およびACE阻害剤、β遮断薬の導入を行い、心筋逸脱酵素・BNP値は正常化し、壁運動異常は軽快した。生後1か月時点の心臓MRIで、冠動脈前下行枝遠位領域の浮腫像・小さな梗塞像を認めた。不整脈や心室瘤の形成はなく経過している。<考察>多血症や部分交換輸血との関連が示唆された虚血性心機能低下を認めた新生児症例の一例を経験した。本例の病因について文献的考察を加え報告する。