講演情報
[II-P02-4-01]VSD術後遠隔期に生じた下大静脈狭窄を伴う男児の進行性SpO2低下:異常ヘモグロビン症との鑑別
○松尾 悠, 工藤 諒, 西村 和佳乃, 齋藤 完治, 高橋 卓也, 佐藤 啓, 桑田 聖子, 中野 智, 小泉 淳一, 齋木 宏文 (岩手医科大学 医学部 小児循環器)
キーワード:
SpO2低下、下大静脈狭窄、異常ヘモグロビン
【背景】異常ヘモグロビン症では血行動態に異常がなくPaO2が正常であるにも関わらずSpO2のみが低値を示す。先天性心疾患治療後の経過観察中に進行性SpO2低下を認めた症例の臨床経過を共有し、異常ヘモグロビン症鑑別のポイントを検討した。【症例】乳児期に心室中隔欠損症(VSD)に対する閉鎖術を施行した7歳男児。5歳頃より90%前後の低値を示すことが増え進行性SpO2低下と診断した。VSD閉鎖後前後にSpO2とPaO2の解離はなく、小学校進学前後から進行してきたため右左シャント疾患を鑑別したが、肺高血圧や心内構造異常はなく、肺血流シンチグラフィーのシャント率は5%程度であった。次第にSpO2が80%台をしめすことが増え、更に精査したところ下大静脈圧狭窄を認めたが、人工心肺時の脱血間の影響は否定的であった。門脈は確かに側副血管と交通していたが、血流方向は奇静脈から門脈方向であった。SpO2低下を認めた時期から軽度血清ビリルビン値の上昇を示したこと、HbA1cが検出感度以下であったことなどから異常ヘモグロビン症を疑い、遺伝子検査でヘモグロビンKöln症を診断した。【考察】Hb異常症が数年かけて臨床症状を呈した背景には、胎児ヘモグロビンの影響、周術期輸血、成長に伴う血球寿命や形態変化が影響した可能性がある。異常ヘモグロビン症では下大静脈狭窄合併例がしばしば報告され、Budd-Chiari症候群に対する肝移植後に下大静脈狭窄が再発した症例の報告もある。本例では実際に門脈と体静脈系の交通が確認されたことから、将来門脈体循環シャントを形成し病態が悪化する可能性について継続評価が必要である。【結論】VSD術後遠隔期に進行性のSpO2低下を認め、最終的に異常ヘモグロビン症と診断した。下大静脈狭窄の存在と緩やかなSpO2の低下という経過により鑑別診断が複雑となった症例であった。