講演情報
[II-P02-4-02]褐色細胞腫を発症した未修復肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損、主要体肺側副血行の8歳男児例
○江頭 はるな1, 野崎 良寛1,2, 穂坂 翔1, 後藤 悠大3, 武島 直子4, 山田 麻里子4, 林 知洸1, 矢野 悠介1, 石踊 巧1,5, 村上 卓1,2, 高田 英俊1,2 (1.筑波大学附属病院 小児科, 2.筑波大学 医学医療系 小児科, 3.筑波大学附属病院 小児外科, 4.筑波大学附属病院 麻酔科, 5.筑波メディカルセンター病院 小児科)
キーワード:
肺動脈閉鎖、褐色細胞腫、高血圧
【背景】チアノーゼ性先天性心疾患 (CHD) 患者が褐色細胞腫(PCC)を合併する割合は非チアノーゼ性CHDに比べて高いことが知られている。CHD合併PCCの既報は10代以降発症で、低年齢児の報告はない。今回、肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損(PAVSD)、主要体肺側副血行路(MAPCA)で慢性的に高度の低酸素血症状態にある8歳児がPCCを発症したので報告する。【症例】8歳男児。インドネシアで出生、チアノーゼを契機にPAVSD、MAPCAと診断され、同国での治療は困難で無治療で経過した。6歳で来日し当院を受診し、室内気でSpO2 74%だった。MAPCAは細く統合困難だったが、ConfluentのNativeな肺動脈があり、大動脈-主肺動脈シャント術を施行し肺動脈の発育を図った。吻合部狭窄へのバルーン拡張やシャントサイズアップを行ったが、在宅酸素2L/min使用下でSpO2 70%台前半で経過した。8歳時に発汗の増加と163/105mmHgの高血圧が出現した。造影CTで右副腎に造影効果を伴う腫瘤あり、MIBGシンチで同部位への集積亢進あり、尿中ノルアドレナリン、ノルメタネフリン異常高値のため、PCC確実例と診断した。MIBGシンチで転移/多発病変はなく腫瘍切除の方針とした。α1遮断薬(プラゾシン)の内服を開始し速やかな降圧が得られβ遮断薬は要せず術前状態は安定した。術中管理として切除前はα1遮断薬(フェントラミン)とニトロプルシドで、切除後はバゾプレシンとカテコラミン調整で循環動態安定し、術後2日で血管作動薬は不要となった。【考察】VHLやSDHx等の遺伝子に変異があるとHypoxia-Inducible Factor(HIF)という転写因子が活性化しPCCに繋がるとされる。低酸素刺激でさらにHIF経路が活性化すると腫瘍細胞の成長が助長され、チアノーゼ性CHD児のPCCリスクが上がると推察されている。本児も関連遺伝子検査を進めている。【結論】チアノーゼが持続すると低年齢でもPCCを発症する可能性があり、血圧を観察し高血圧時に速やかな検索を進める必要がある。