講演情報

[II-P02-4-04]先天性心疾患術後遠隔期に腰部痛を契機に尿路感染症と診断され、血行感染から化膿性脊椎炎に至った2例

佐藤 麻朝, 上田 知実, 嶋 侑里子, 松村 雄, 小林 匠, 齋藤 美香, 吉敷 香菜子, 浜道 裕二, 矢崎 諭, 嘉川 忠博 (榊原記念病院)
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キーワード:

化膿性脊椎炎、画像診断、術後遠隔期

【背景】成人の発熱と腰部痛の原因として尿路感染症が一般的であるが、感染性心内膜炎(IE)や化膿性脊椎炎も鑑別診断として考慮すべきである。今回、尿路感染症・IEの疑いで加療後に画像診断で化膿性脊椎炎と診断した先天性心疾患術後遠隔期の2症例を経験したため報告する。【症例】症例1:37歳男性。両大血管右室起始症に対し主肺動脈絞扼術後、Eisenmenger症候群を呈していた。1週間前より腰痛が出現し、前医で血液検査とCTを施行するも異常なく経過観察となった。食欲低下と倦怠感が出現し当院受診。背部叩打痛を認め尿路感染症の疑いで入院し抗生剤投与を開始した。発熱精査のため造影CTを施行したところ、胸椎の椎弓根に骨破壊像、周囲筋内に不均一な造影効果を認め、化膿性脊椎炎と診断。8週間の抗生剤治療を要した。症例2:44歳女性。ファロー四徴症心内修復術後。発熱と腰部痛を主訴に前医を受診し、炎症反応上昇と尿検査で膿尿を認め尿路感染症と診断され抗生剤治療を開始。心疾患の既往を考慮し当院へ転院となった。転院翌日の血液培養でGPC陽性(Streptococcus mitis)を認めIEの疑いで8週間治療継続。腰痛は持続していたが、対症的に経過観察となった。退院後に整形外科でMRIを施行したところL5-S1に信号強度増強を認め、化膿性脊椎炎と診断され抗生剤加療を要した。【考察】化膿性脊椎炎はIEの約5%に合併し、術後や尿路感染に伴う後腹膜炎症が傍脊椎静脈叢へ波及することでも発症する。本症例では、経胸壁心エコーで疣贅は確認されなかったが、症例2では血液培養陽性でIEの可能性が考えられた。化膿性脊椎炎の主症状は腰痛であり、発熱や炎症反応上昇を伴う症例では本疾患を鑑別に挙げることが重要である。症状経過を慎重に観察し、適切な画像検査を行うことが診断の鍵となる。