講演情報

[II-P02-4-05]胃軸捻転による手術を要した無脾症の2例:小児循環器科医も知っておくべき急性腹症の初期対応

鬼頭 真知子, 菅原 沙織, 太田 隆徳, 山田 佑也, 伊藤 諒一, 野村 羊示, 田中 優, 今井 祐喜, 河井 悟, 安田 和志 (あいち小児保健医療総合センター 循環器科)
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キーワード:

無脾症、胃軸捻転、内臓錯位症候群

【背景】無脾症は、重症度の高い多彩で複雑な心奇形に加え、腹部臓器異常や易感染性などの心外合併症を有し、後者もときに生命予後に大きく関連する。胃は本来、胃脾間膜により脾臓と固定されているが、無脾症では胃脾間膜欠損による胃の固定不全により胃軸捻転を起こしやすい。当院では、胃軸捻転による手術を要した無脾症例を2例経験した。初期対応の違いがその後の経過に大きく関係すると考えられたため、報告する。
【症例1】2歳女児。右側相同、右胸心、単心室、肺静脈狭窄、グレン術後。嘔吐のため前医小児外科を受診、胃軸捻転と診断され入院。胃管挿入し減圧を試みたが捻転は解除されず、手術を念頭に第3病日に当院へ転院。転院後も保存的治療を継続するも捻転が解除されず、第6病日に腹腔鏡下胃固定術施行。術後経過順調で、術後11日目に自宅退院。
【症例2】12歳男児。右側相同、右胸心、単心室、フォンタン術後。心窩部痛、嘔吐が続くため第3病日に当院ERを受診。急性胃腸炎と診断され入院し、補液管理開始。胸部X線で確認できる範囲では消化管ガスを認めなかった。翌日、腹部膨満が増悪し腹部X線で著明な胃泡拡大を認め胃管が挿入されたが症状は改善せず、数時間後に激烈な腹痛と呼吸窮迫の訴えがあり、低血圧性ショックをきたした。腹部CTにより胃軸捻転に伴う胃穿孔、急性汎発性腹膜炎と診断され、緊急開腹胃部分切除術施行。術後縫合不全のため再手術を要し、初回開腹術後30日以降も入院継続中。
【考察】無脾症で嘔吐を反復する場合、年齢を問わず、胃軸捻転を念頭に置く必要がある。腹部X線を積極的に確認し、胃軸捻転を疑う場合には早期に胃管留置による減圧を試みることで、捻転は解除されなくとも穿孔や緊急手術の回避が期待できる。必要に応じて迅速に小児外科医と連携することが重要である。