講演情報

[II-P02-4-06]大血管転位術後遠隔期に運動時失神を呈した一例

小澤 綾佳1, 岡部 真子1, 仲岡 英幸1, 伊吹 圭二郎1, 廣野 恵一1, 元野 壮2, 鳥塚 大介2, 青木 正哉2, 芳村 直樹2 (1.富山大学 医学部 小児科, 2.富山大学 医学部 第一外科)
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キーワード:

完全大血管転位、術後遠隔期、冠動脈狭窄

【はじめに】大血管転位(TGA)術後では、冠動脈狭窄/閉塞は致死的な合併症となり得る。多くは術後1年以内の発症であるが、遠隔期にも3~8%に合併する。無症状であることも多く、予期せぬ心イベントの原因となるため、早期診断が求められる。【症例】13歳の男児。出生後にチアノーゼで当院に搬送され、posterior TGA(1LCx ; 2R)と診断された。日齢8にoriginal Jatene手術を施行し、1歳時、6歳時の心臓カテーテル検査では、冠動脈狭窄は指摘されなかった。小学生から運動部に所属していたが、無症状で、11歳までに受けた運動負荷検査等で心筋虚血所見は認めなかった。中学入学後、部活での激しいトレーニングの後に、突然意識消失し転倒した。全身間代性痙攣を認め、前医に救急搬送された。治療後意識は速やかに回復し、神経学的後遺症もみられなかった。受診時の心電図上、PACの散発と、V5,6の軽度ST低下を認めた。当院で行った運動負荷検査では、明らかな2、3、aVf、 V4-6のST低下を認め、心筋シンチでは、心尖部の軽度血流低下所見を認めた。CTでは左冠動脈起始部が肺動脈と大動脈間を走行し、開口部に狭窄を認めた。結果をもとに当院第一外科で狭窄解除術を施行した。左冠動脈起始部は楕円形に狭窄しており、cutback法で拡大した。術後経過は順調で、運動負荷での心筋虚血所見も改善した。【考察】TGA術後遠隔期の冠動脈狭窄は、内膜肥厚や、成長に伴う伸長やねじれが成因と考えられ、病変は経時的に進行する。本症例では、左冠動脈が大血管間を走行する形態であり、成長に伴い起始部の狭窄が進行したと考えられた。無症状であっても節目毎のCT検査を行っていれば、発症を予防できた可能性がある。【結語】TGA術後の冠動脈狭窄の検出には、定期的な運動負荷検査だけでなく、特に前思春期を含めた時期のCT画像評価が重要である。