講演情報

[II-P02-4-08]術後遠隔期に左上肢の虚血症状を呈した右側弓大動脈縮窄の一例

丸谷 怜, 西 孝輔, 益海 英樹, 今岡 のり, 稲村 昇 (近畿大学医学部小児科学教室)
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キーワード:

大動脈縮窄、術後遠隔期、虚血症状

【症例】15歳の女子。胎児期から大動脈弓の異常を指摘されていた。在胎35週1768gで出生、右側大動脈弓と大動脈縮窄を指摘された。造影CTでは急峻な右側大動脈弓で、1枝目が左内頚動脈、2枝目が右内頸動脈、その後縮窄部を経て3枝目に右鎖骨下動脈、そのさらに末梢側から4枝目として左鎖骨下動脈が分枝していた。日齢43で狭窄部の修復手術を施行し、その際、クランプテストで確認して左鎖骨下動脈は離断した。術後1年の造影検査では左鎖骨下動脈は右側から供給を受けた左椎骨動脈からの血流を受けていた。その後、特に症状はなく、体格は小さいものの上肢長の左右差もなく成長した。14歳になって、特に誘因なく突然に左上肢の疼痛を訴え、左上肢だけ蒼白となる症状を来した。温めて徐々に回復、数時間で症状は消失した。その後も時折、発作的に同様の症状を来すようになり、温めることで回復するが生活にも支障が出始めたので脳外科と協力して精査となった。左鎖骨下動脈は主に左椎骨動脈から逆行性に血流が供給されており、その他に左後頭動脈と左上行咽頭動脈からも血流を受けていた。いずれにも狭窄などはなく、血流量不足に陥ることは考えにくかったため、外科的な血行再建は見送った。【考察】新生児期における大動脈縮窄の修復に際して、鎖骨下動脈フラップ法により左鎖骨下動脈を離断しても左上肢の血行に大きな問題が起きないことは知られている。本例でも成長にあたって特に問題になることはなかったが、成長後に突然虚血症状を来した原因は判然としない。椎骨動脈を介する血行動態でありながら脳血流に問題が起きずに左上肢だけ虚血症状を来すことから末梢血管の問題とも考えられた。末梢血管の問題なら左鎖骨下動脈の血行再建が有用かは疑問で、血管拡張薬は盗血症候群を起こす可能性もあり、治療方針に難渋している。大動脈縮窄術後の遠隔期に起きた稀な症候として報告する。