講演情報

[II-P02-6-04]頭部外傷後に発作性交感神経過活動を発症したフォンタン術後症候群の12歳男児

奥田 依里, 植之原 里香, 高橋 宜宏, 中江 広治, 川村 順平, 上野 健太郎 (鹿児島大学病院 小児科)
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キーワード:

フォンタン術後症候群、発作性交感神経過活動、頭部外傷

【背景】発作性交感神経過活動(PSH)は外傷などを契機に、頻脈、高血圧、発汗、高熱などの症状が持続する交感神経過活動状態である。【症例】フォンタン術後症候群(右室型単心室)の12歳男児。右室面積変化率(FAC)48%、軽度の三尖弁逆流を認めるが、循環は安定しており、ワルファリン、アスピリン、イミダプリル、カルベジロールを内服していた。出血性合併症の既往なくPT-INR 2.0で管理していた。X日にバスケットボールが頭部にぶつかり受傷した。X+1日に頭痛の増強と左後頭部腫脹を主訴に当院を受診し帽状腱膜下血腫と診断された。SpO2 94%、GCS E4V5M6、貧血や凝固障害はなかった。抗血栓療法を中止し安静入院としたが、入院後に血圧149/102mmHg(平常時90/60mmHg)、心拍数127/分(平常時70/分)まで上昇した。カテコラミンサージと判断し、鎮痛薬強化、ニカルジピン持続投与、カルベジロールを増量し治療を開始した。胸痛、胸部圧迫感は認めず、徐々に高血圧、頻脈も改善し、X+11日にニカルジピンを漸減終了した。治療中は右室FAC 50%前後で推移し、たこつぼ型心筋症の病態は呈さなかった。心電図では急性期にII・V2-V6誘導の陰性T波を認めたが経時的に改善し、X+15日に受傷前と同様の所見に戻った。小児PSH score≧8でPSHと最終診断した。【考察】PSHは症候性合併症で、カテコラミン過剰や自律神経過緊張が原因と考えられている。本症例は心電図での虚血性変化を認めたが、たこつぼ型心筋症の病態を呈さなかった。早期の安静入院・加療やフォンタン術後の自律神経活動異常、体心室のβ1受容体局在性の差異が、異なる表現型を呈する可能性が考えられた。【結語】抗血栓療法中のフォンタン術後症候群患者では外傷に伴う出血性合併症を契機にPSHを発症する可能性があり、画像検査と共に注意深いバイタルサインの評価が重要である。