講演情報
[II-P02-6-07]フォンタン術後小児患者における鉄欠乏性貧血と心肺運動機能低下の関連性の検討
○佐藤 要, 西畑 綾夏, 矢野 瑞貴, 前田 佳真, 石井 徹子, 東 浩二 (千葉県こども病院)
キーワード:
fontan、鉄欠乏性貧血、最高酸素摂取量
背景:Fontan術後の患者は、チアノーゼによる代償性の造血亢進や消化管吸収障害により、しばしば鉄欠乏性貧血(IDA)を呈する。成人症例では、IDAと運動機能低下の関連が報告されている。一方で、術後年数や代謝の異なる小児のFontan術後患者における両者の関連はいまだ検討されていない。本研究では小児例における赤血球系計測値(血算)や鉄動態と運動機能の関連を検討した。方法:2022年8月から2024年12月に心肺運動負荷試験と血液検査を一ヶ月以内の間隔で実施した20歳未満のFontan術後患者を対象とした。最高酸素摂取量(VO2)に対する安静時の酸素飽和度(SpO2)、血算、鉄動態の関連について、Spearmanの順位相関係数を用いて評価した。血算は赤血球数 、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット、平均赤血球容量(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン容量、平均赤血球ヘモグロビン濃度、赤血球体積分布幅(RDW)の7項目、鉄動態は血清鉄(Fe)、不飽和鉄結合能、総鉄結合能、フェリチン、トランスフェリン飽和率(TSAT)の5項目である。結果:検討対象は31例、平均年齢12.7歳、Fontan術後年数9.9年、SpO2 92.8%、VO2 79.2%Nであった。血算は全例で実施され、平均でHb 15.1 g/dl、MCV 85.3 fl、RDW 14.0%であった。 鉄動態は23例で測定され、21例がフェリチン100 μg/l未満、9例がTSAT 20%未満であった。VO2はRDW (r=-0.44, p=0.01)、Fe (r=0.53, p<0.01)、TSAT (r=0.52, p=0.01)と有意に相関を示した。Hb (r=0.01, p=0.95)などその他の採血項目やSpO2 (r=-0.14, p=0.44)はVO2と有意な相関を認めなかった。結論:小児のFontan術後患者においてIDAと心肺運動機能低下の関連が示唆された。一般的にIDAにおいて、RDWの上昇がHbやMCVの変化に先行することが知られており、本研究でも血算においてはRDWがIDA・運動機能低下の鋭敏な指標と考えられた。今後、小児フォンタン術後患者の鉄動態への介入が運動機能を改善しうるかを検討する必要がある。