講演情報

[II-P02-6-09]先天性心疾患患者の運動耐容能評価におけるminimum VE/VCO2の有用性 -BPAによる改善の一例-

富永 雅規1, 野崎 良寛1,2, 川松 直人3, 林 知洸1, 矢野 悠介1, 石踊 巧1, 村上 卓1,2, 高田 英俊1,2 (1.筑波大学附属病院 小児科, 2.筑波大学 医学医療系 小児科, 3.筑波大学附属病院 循環器内科)
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キーワード:

CPX、minimum VE/VCO2、BPA

【はじめに】先天性心疾患患者は心肺機能が低下していても無自覚で、心肺運動負荷試験(CPX)で潜在的な運動耐容能低下を検出することは重要である。今回フォンタン循環患者において、バルーン肺動脈拡張術(BPA)前後でCPXが施行され最高酸素摂取量(peak VO2)やVE/VCO2 slopeに加え、呼吸性代償開始点でのVE/VCO2最低値(minimum VE/VCO2)などの指標が改善した一例を報告する。
【症例】男児。三尖弁閉鎖(Ib)、両側上大静脈。3歳時にExtra-Cardiac TCPC術を施行されフォンタン循環が確立した。TCPC導管吻合部の右肺動脈狭窄およびGlenn吻合後の左上大静脈の残存狭窄に対して14歳時にBPAを実施された。BPA後17歳のカテーテル検査ではCI 3.1→3.3L/min/m2、右肺動脈径8.5→18.4 mm、左肺動脈径15.2→17.9mm、PA index 160→290、中心肺動脈圧19→15 mmHg、狭窄部圧較差5→0 mmHgとなった。14歳時と17歳時のCPX指標はpeak VO2 24.6→33.6 ml/min/kg (% predicted peak VO2 65→91 %)、嫌気代謝閾値(AT) 19.7→19.0ml/min/kg(% predicted AT 91→91%)、VE/VCO2 slope 36.0→27.2、minimum VE/VCO2 36.2→28.4 ml/mlとそれぞれ改善を示した。
【考察とまとめ】minimum VE/VCO2は、心拍出低下や肺胞低換気の程度が強いほど高値を示すとされ、最大運動を必要とせず、再現性も高い。成人では、慢性血栓塞栓性肺高血圧症において、BPAなどの侵襲的治療後にこの指標が改善することが報告されている。本症例においてもBPAの結果、肺血管床が拡張したことでminimum VE/VCO2が改善し、延いては運動耐容能(peak VO2)が改善したと考えられる。この結果から、小児および先天性心疾患患者においても、minimum VE/VCO2が肺血管床の充足度や介入の適応を示す指標となる可能性が示唆された。小児における基準値の構築や、侵襲的介入や肺血管拡張薬導入前後での変化に関する知見の蓄積が望まれる。