講演情報

[II-P03-1-01]重症心不全を伴うFontan適応外の単心室患者に対しVAD装着とFontan手術を併用し心臓移植を志向した1例

吉田 尚司1, 新川 武史1, 山形 顕子1, 新浪 博士1, 竹蓋 清高2, 島田 衣里子2, 朝貝 省史2, 石戸 美妃子2, 稲井 慶2 (1.東京女子医科大学 心臓血管外科, 2.東京女子医科大学 循環器小児・成人先天性心疾患科)
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キーワード:

LVAD、Failed single ventricle palliation、Fontan completion

背景Fontan手術適応外となったFailed single ventricle palliation患者に対し、最後の外科治療として心臓移植を志向する場合もある。しかし単心室循環、特にFontan非到達例における補助人工心臓(VAD)治療の成績は一般的には不良である。今回、重症心不全を伴うGlenn術後患者に対して、VAD装着とFontan手術を併用し良好に心臓移植待機を行っている1例を経験したので報告する。症例6歳、21.9kgの男児。三尖弁閉鎖、完全房室ブロックに対し日齢3に肺動脈絞扼、ペースメーカー植込術、5ヶ月時にGlenn、DKS、心房中隔欠損拡大術を実施。低心機能(EF 44%)のためFontan手術非適応と判断されていた。重症僧帽弁閉鎖不全と更なる左室機能低下(EF 27%)を認め、6歳時に僧帽弁置換術を施行するも左室機能は更に悪化し(EF 7%)、VAD装着術目的に当院転院。術前カテーテル検査で肺動脈圧15mmHg、肺動脈楔入圧11mmHg、肺血管抵抗 2.8 U・m2であり、心エコー検査で中等度の肺動脈弁(新大動脈弁)閉鎖不全を認めた。植込型VAD装着に加えて、Fontan手術(16mm ePTFEによる心外導管型TCPC)、DKS take-down、肺動脈弁直接閉鎖を実施した。術翌日に抜管し、術後6日目にICU退室。術後16日目に硬膜下血腫術後を合併したが外科的介入は要さず、術後76日目に退院した。術後9ヶ月のカテーテル検査では肺動脈圧10mmHg、肺動脈楔入圧7mmHg、肺血管抵抗 0.9U・m2と良好で、VAD流量は2.3L/min (2.6L/min/m2)、SpO2は94%であった。現在、外来通院にて心臓移植待機中である。結語重症心不全を伴うGlenn術後患者において肺血管抵抗が十分低い場合は、VAD装着とFontan手術の同時施行により良好な状態で移植待機が可能と思われる。