講演情報

[II-P03-1-06]静脈管ステント留置後の無脾症・単心室における下心臓型TAPVC修復術後の肝機能障害に対する考察

弘中 裕士1, 篠原 玄1, 落合 由恵1, 仁田 翔大1, 馬場 啓徳1, 徳永 滋彦1, 杉谷 雄一郎2, 渡邉 まみ江2, 宗内 淳2 (1.独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)九州病院 心臓血管外科, 2.独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)九州病院)
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キーワード:

静脈管ステント、下心臓型総肺静脈環流異常症、単心室

【背景】近年、無脾症・単心室に伴う総肺静脈還流異常(TAPVC)に対する初回介入としてステント留置が選択されるようになったが, 合併症に関しては不明な点も多い.【症例】診断: 右胸心, 右室型単心室, 右側房室弁閉鎖, 肺動脈閉鎖, TAPVC (III).胎児診断にて紹介となり在胎40週, 出生体重2826 gで出生. 経胸壁心エコー検査では両側の肺静脈は共通肺静脈腔を形成し垂直静脈へ接続していた. 垂直静脈は左胸腔内を下行し門脈に接続し肝内および静脈管を介して下大静脈へ流入していた. 日齢1に静脈管が閉鎖傾向となったため, 静脈管に経皮的ステント留置術を実施した(XIENCE Skypoint 4mm × 28mm). 垂直静脈造影では肝内門脈が拡張していた. 日齢25にステント内狭窄に対してバルーン拡張術を施行した. その後, 体重は増加し, 造影CT検査で共通肺静脈くの拡大が得られ月齢4, 体重 4.1 kgでTAPVC repair (sutureless法), Central shunt (4 mm), 垂直静脈結紮を施行した. 術当日, 出血のため再開胸を要したが循環動態は安定して経過. 第3病日最大でAST 6462 U/L, ALT 1340 U/L上昇を認めた. 腹部エコーで静脈管ステント内の狭窄と左門脈血流の低下を認めた. TAPVC修復前後で垂直静脈から肝内門脈への血流減少による肝虚血, 左門脈の血栓症などが原因として考えられた. 肝機能障害が軽度であったため静脈管ステントのコイル塞栓は行わず, 保存的治療を継続し, AT-III補充を行った. 第4病日にはAST 4910 U/L肝機能障害は自然に改善が得られ, 第25病日ICU退室, 第53病日自宅退院. また, 術前造影CT検査では門脈径 11.5mmであったが, 術後4ヶ月で5.5 mmに縮小していた.【考察】静脈管ステント留置後の下心臓型TAPVC修復術後の肝機能障害に対し, ステント塞栓術による門脈体循環シャントの閉鎖が有用とする報告もあるが, 本症例は垂直静脈結紮による門脈血流の変化や門脈血栓による機序も考慮した管理が必要であると考えられた.