講演情報
[II-P03-2-01]イロプラストからトレプロスチニル吸入に変更後、BNPの低下を認めたPotts短絡術後・肺高血圧・拘束型心筋症の20歳男性
○岩本 洋一, 石戸 博隆, 増谷 聡 (埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター小児循環器部門)
キーワード:
肺高血圧、トレプロスチニル、BNP
【背景】肺血管拡張薬であるイロプラスト(I)吸入の製剤提供が終了し、半減期の長いトレプロスチニル(T)吸入が使用できるようになったが、両者の直接比較のデータは限られる。I吸入からT吸入への変更前後で経時的な評価を行い、変更後にBNPの低下を認めた症例を報告する。
【症例】体血圧を凌駕する肺動脈性肺高血圧・拘束型心筋症に対して13歳時にPotts短絡を施行し、各種治療により等圧の肺高血圧で維持されるようになっていた。20歳時にI吸入をT吸入に変更した。心エコー・末梢静脈圧・BNPを月一回評価しており、季節性の変動も考慮して各指標について変更前後各1年間12回ずつを2群としてMann-Whiteny U検定で比較した。この間、マシテンタン10mg、タダラフィル40mgの内服は不変、他の抗心不全療法もほぼ不変であった。観察期間に有害事象は認めず、NYHAは主に IIIで心不全入院はなく安定して経過した。Potts短絡術後で経過中、等圧の肺高血圧は不変であった。変更前から後で肺動脈弁逆流圧較差は中央値39 から39mmHg、末梢静脈圧は10から10 mmHg、下肢SpO2は92から92%で不変であり、収縮期血圧は75から79 mmHgで有意な変化を認めなかった(P=0.116)。BNPは中央値[四分位]で333[291, 371]から236[196, 281]へ有意に低下した(P=0.001)。
【考察】本症例ではI吸入をT吸入に変更後にBNPの有意な低下が観察された。このBNP低下が吸入法の変更によるものと直ちに判断することはできないが、日々の吸入回数が6回から4回に減じるなど患者および家族の満足度も非常に高く、本症例においてはT吸入への変更は有用であったと考えられた。
【症例】体血圧を凌駕する肺動脈性肺高血圧・拘束型心筋症に対して13歳時にPotts短絡を施行し、各種治療により等圧の肺高血圧で維持されるようになっていた。20歳時にI吸入をT吸入に変更した。心エコー・末梢静脈圧・BNPを月一回評価しており、季節性の変動も考慮して各指標について変更前後各1年間12回ずつを2群としてMann-Whiteny U検定で比較した。この間、マシテンタン10mg、タダラフィル40mgの内服は不変、他の抗心不全療法もほぼ不変であった。観察期間に有害事象は認めず、NYHAは主に IIIで心不全入院はなく安定して経過した。Potts短絡術後で経過中、等圧の肺高血圧は不変であった。変更前から後で肺動脈弁逆流圧較差は中央値39 から39mmHg、末梢静脈圧は10から10 mmHg、下肢SpO2は92から92%で不変であり、収縮期血圧は75から79 mmHgで有意な変化を認めなかった(P=0.116)。BNPは中央値[四分位]で333[291, 371]から236[196, 281]へ有意に低下した(P=0.001)。
【考察】本症例ではI吸入をT吸入に変更後にBNPの有意な低下が観察された。このBNP低下が吸入法の変更によるものと直ちに判断することはできないが、日々の吸入回数が6回から4回に減じるなど患者および家族の満足度も非常に高く、本症例においてはT吸入への変更は有用であったと考えられた。