講演情報

[II-P03-2-02]若年で高度な肺高血圧を来した心房中隔欠損合併部分肺静脈灌流異常症例

林 賢, 海陸 美織, 西野 遥, 加藤 周, 長野 広樹, 森 雅啓, 松尾 久実代, 浅田 大, 石井 陽一郎, 青木 寿明 (大阪母子医療センター 循環器科)
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キーワード:

部分肺静脈灌流異常、肺高血圧、upfront combination therapy

【背景】部分肺静脈灌流異常で肺高血圧を来す症例は小児ではまれである。今回5歳と若年で高度な肺高血圧を来し、複数経路の治療薬を併用するupfront combination therapyにより肺血管抵抗を下げることで、部分肺静脈灌流異常修復術が安全に施行でき、治療により労作時疲労感が著明に改善したため、報告する。【結果】症例は5歳男児で、受診1年前より労作時疲労感の訴えあり、受診3か月前に全身浮腫を認め、近医で部分肺静脈灌流異常、肺高血圧と診断され、利尿薬を開始された。当院紹介され、肺高血圧の精査および治療を開始した。採血・CTでは肺高血圧を来しうる原因は明らかでなく、心エコーで右上下肺静脈の部分肺静脈灌流異常と心房中隔欠損を伴っており、右心系の著明な拡大と、高度な肺高血圧を認めた。肺うっ血に注意をしつつ、酸素、肺高血圧薬を漸増し、シルデナフィル導入後の心臓カテーテル検査では、FiO2 0.3でQp/Qs=1.1、mPAP 84mmHg、Rp 10.8、FiO2 1.0でQp/Qs=5.4、mPAP 77mmHg、Rp 1.1、FiO2 0.21+NO 20ppmでQp/Qs=2.2、mPAP 70mmHg、Rp 6.2と酸素・NOに反応がみられた。肺血管拡張薬3系統+急性血管反応試験に反応ありCa拮抗薬を導入したところでカテ後早期に手術を組む方針とし、4剤導入後の検査で、FiO2 0.3でQp/Qs=2.7、mPAP 58mmHg、Rp 3.5と肺血管抵抗の改善あり、開窓付き心房中隔閉鎖術および部分肺静脈灌流異常修復術を予定した。術後PH crisisを来すことなく術後3日でICUを退室した。術後の検査では、FiO2 0.21でQp/Qs=1.1、mPAP 27mmHg、Rp 4.0まで改善あり。遺伝性肺高血圧の遺伝子検査は陰性であった。【考察】部分肺静脈灌流異常は年齢を経て肺高血圧が増悪するとする報告があるが、若年で高度な肺高血圧を来した報告は少ない。【結論】心房中隔欠損を伴う部分肺静脈灌流異常で高度な肺高血圧を呈した若年例に対し、複数経路の治療薬を併用し、修復術を安全に行うことができた。