講演情報

[II-P03-2-05]小児における肺疾患による肺高血圧に対するPDE5阻害剤の治療効果

伊藤 拓海, 竹中 颯太, 鵜飼 啓, 安田 昌広, 木村 瞳, 小山 智史, 篠原 務 (名古屋市立大学大学院 医学研究科 新生児・小児医学分野)
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キーワード:

肺疾患による肺高血圧、PDE5阻害薬、小児

【背景】小児における肺疾患による肺高血圧に対する肺高血圧治療薬の効果・安全性を示す報告は多くない。【症例】1歳6か月の男児。在胎36週2日、出生体重1690 gで出生し、前医NICU入院となった。新生児遷延性肺高血圧症のため酸素吸入を要した。染色体検査で21トリソミーの診断がされた。生後1か月で在宅酸素療法を導入し退院した。生後6か月でアデノウイルス肺炎となり前医入院し、高流量鼻カニュラでの呼吸管理を要し、在宅酸素療法に戻して退院となった。生後7か月で同様のエピソードを繰り返した。退院後、循環器専門外来を受診した際に、吸気性喘鳴と著明な陥没呼吸を認め、心エコーで肺高血圧が増悪していた。心房中隔の小欠損のみであり、気道病変に伴う肺高血圧の悪化と評価して在宅高流量鼻カニュラを導入したところ、呼吸状態と肺高血圧所見は改善した。1歳6か月時に肺高血圧の評価目的で当院へ紹介となった。胸部CTで両肺に多発する末梢の気腫性病変とびまん性の索状病変を認めた。心エコーで肺高血圧は、乳児期と比較して改善していた。心臓カテーテル検査は舌根沈下のため高流量鼻カニュラを用いて室内気で施行した。Qp/Qs 1.1、PAP 46/22(35) mmHg、PCWP 11 mmHg、Pp/Ps 0.5、PARI 6.0 WU・m 2と高度の肺高血圧を認めた。酸素・一酸化窒素吸入試験によりQp/Qs 1.4、PAP 30/15(20) mmHg、PCWP 12 mmHg、Pp/Ps 0.3, PARI 1.7 WU・m 2まで改善し、肺血管の可逆性を認めた。酸素吸入治療に加えて、さらにPDE5阻害剤内服を開始した。肺血管拡張薬内服導入後、半年でのカテーテル検査結果を踏まえて報告する。【考察】本症例は21トリソミーに伴うDevelopmental lung disorderを基盤とし、低出生体重、上気道狭窄、繰り返す気道感染など複合的な病態により、慢性的な肺疾患による肺高血圧が遷延し増悪した。小児における肺疾患による肺高血圧に対する酸素吸入療法に加えたPDE5阻害剤の治療効果を報告する。