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[II-P03-2-07]心室中隔欠損症における乳児期早期の心電図を用いた高肺血流性肺高血圧および自然閉鎖の予測

神野 太郎, 高橋 努 (済生会宇都宮病院 小児科)
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キーワード:

心室中隔欠損症、心電図、予後予測

【背景】心室中隔欠損症(VSD)において肺高血圧 (PH)進行前に手術時期を判断することは重要である. 一方で7割が自然閉鎖する. 近年出生後早期のVSD患者における心電図 (ECG)の特徴が報告されており, 以前, 月齢2のRV1>17.8mm, RV5>30.6mm, RV6>23.4mmは乳児期手術適応の予測因子であることを報告した. ECG所見が予後予測に有用である可能性があり, 本研究では乳児期早期のECG所見とPH進行, 自然閉鎖の関連を検討した.【方法】2018年1月から2023年10月に出生し, 月齢1-3に心電図検査を受けた膜性部VSD患者を対象に, 当院の診療録を後方視的に解析した. PH進行の評価には心臓カテーテル検査所見を用いた. 自然閉鎖の評価は観察期間中のエコー所見を基に判定した. 染色体異常や多発奇形症候群を伴う症例は除外した.【結果】VSD 42例のうち, mPAP>20 mmHgを示したのは3例であり高肺血流だった. mPAP>20 mmHgの症例では月齢1時点でRV5, RV6が有意に高かった (p=0.006, p=0.01 ). RV1も高値を示す傾向があった (p=0.1). ROC解析では, RV5 (cut-off 34.8 mm, AUC 0.95, 感度 0.89, 特異度 1.0), RV6 (cut-off 23.2 mm, AUC 0.92, 感度 0.85, 特異度 1.0)であった. また, 16例が自然閉鎖を認めた. 自然閉鎖群では月齢1でRV1が有意に低く (p=0.005), RV5, RV6も低い傾向を示した (p=0.007, p=0.3). ROC解析では, RV1 (cut-off 17.8 mm, AUC 0.8, 感度53%, 特異度 93%), RV5 (cut-off 20.3 mm, AUC 0.7, 感度 73%, 特異度 64% )であった.【考察】高肺血流性PHとなるVSDでは, 乳児期早期からECG上でRV5, RV6増高を認める可能性が高い. 一方, ECG所見の変化が少ない症例では自然閉鎖を期待でき, エコー検査頻度の低減が可能となる.【結語】VSDの乳児で月齢1にRV5>34.8 mm, RV6>23.2 mmを示す場合, PHの進行を予測して早期の手術を検討できる. 一方, 月齢1にRV1<17.8 mm, RV5<20.3 mmの場合は自然閉鎖が期待できる.