講演情報
[II-P03-2-08]肺切除の判断に気管支鏡検査が有用であった喀血を繰り返す左肺静脈閉塞の一例
○五味 遥, 森田 裕介, 古井 貞浩, 岡 健介, 松原 大輔, 横溝 亜希子, 関 満, 佐藤 智幸, 田島 敏広, 小坂 仁 (自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児科)
キーワード:
肺静脈閉塞、肺切除、コイル塞栓術
【はじめに】肺静脈閉塞(PVO)は稀な疾患であり、反復する喀血や肺炎などから診断に至る症例が多い。治療としては側副血管に対するコイル塞栓術(CE)や肺切除術が施行されるが、自然予後も様々であるため治療の選択や介入時期に苦慮する。今回左PVOによる繰り返す喀血がCEではコントロールできず、気管支鏡検査の上左肺切除の判断をした一例を経験した。【症例】10歳女児。完全房室中隔欠損症に対し、生後5ヶ月時に心内修復術を施行。術前の心臓カテーテル検査では肺静脈圧に右7mmHg、左 9mmHgと左右差を認めたが、造影上左肺静脈の環流はスムーズだった。造影CTでは左房流入部での左肺静脈の狭小化を認め、心内修復術時の術中所見でも左肺静脈の開口部は単孔で狭かったが、その時点での介入は不要と判断され観察のみで終了した。術後経過は良好だったが、4歳時に突然喀血をきたし入院した。造影CTでは左PVOと内胸動脈から左肺への側副血管の発達を認め、喀血の原因として肺内出血が疑われた。心臓カテーテル検査でも左肺静脈の完全閉塞を確認し、側副血管に対しCEを施行した。その後入院を要する喀血が5歳と6歳時に一度ずつあり、6歳時には再度側副血管に対するCEを実施した。その後喀血は数年なく経過したが、9歳時に喀血の頻度が増加し、再度側副血管に対するCEを施行した。しかし断続的に喀血は続き硬性気管支鏡検査を施行したところ、気管分岐部から左気管支全体の粘膜面で血管の著明な怒張を認めた。そのため、CEの効果は限定的と判断し10歳時に左肺切除術を実施した。術後経過は良好である。【考察】PVOは発症後時間が経過した場合は肺静脈再建術は適応とならず、繰り返す肺炎や喀血が問題となる。肺切除は胸郭変形などの合併症があり施行時期に留意が必要だが、本症例のように気管支粘膜面全体に血管の怒張を認める場合、喀血に対するCEの効果は限定的と判断し、肺切除を施行する必要がある。