講演情報
[II-P03-2-09]シロリムス全身投与を行った総肺静脈還流異常症術後の反復する肺静脈狭窄症における肺組織像(剖検例)
○蘆田 温子1, 岸 勘太1, 町原 功実1, 水岡 敦喜1, 小田中 豊1, 尾崎 智康1, 鈴木 昌代2, 小西 隼人2, 根本 慎太郎2, 中澤 康毅3, 芦田 明1 (1.大阪医科薬科大学病院 小児科, 2.大阪医科薬科大学病院 小児心臓血管外科, 3.大阪医科薬科大学病院 病理診断科)
キーワード:
肺高血圧、肺静脈狭窄、シロリムス
【背景】総肺静脈還流異常症(TAPVC)術後の肺静脈狭窄症(PVS)に対するシロリムス全身投与の有効性が報告されているが本邦での報告は少ない。今回、シロリムス全身投与を行った児の剖検例を経験したので報告する。【症例】2歳7か月・男児【現病歴】在胎35週1日に体重2646gで出生。出生後にTAPVC(上心臓型)と診断。日齢13にTAPVC修復術施行。術後にPVSを来たし2回再手術を施行。生後4か月、2本は閉塞し、残る2本へステントを留置。その後も哺乳不良、多呼吸、肺高血圧増悪を伴うPVSを繰り返したため、1か月毎にステント内狭窄に対し経皮的バルーン拡大術を要した。生後10か月時よりシロリムス全身投与を開始し、再拡大術を要する期間は2、3か月とやや延長し、肺動脈性肺高血圧(PAH)も改善傾向を示した。1歳9か月時に10回目のバルーン拡大術を施行したが、mPAp:57mmHg、TPG:27mmHg、 Pp/Ps:0.93、PVRi:6.4WU*m2とPAHの進行を認めたため、2歳1か月時にも症状増悪があったが、緩和的ケアの方針とした。2歳7か月、高熱、呼吸困難で外来受診中に急変し、永眠。病理解剖を行った。肺間質の線維化とリンパ管拡張、肺胞内に赤血球を貪食したマクロファージを多数認め、気管支肺炎の所見も認めた。中枢の肺静脈はステント内とその近傍の肺静脈に内膜肥厚を認めた。肺小静脈は中膜・内膜の肥厚を認め内腔がほぼ閉鎖している静脈を多数認めた。小肺動脈では中膜肥厚を認めるものの、内膜病変は認めなかった。【考察】肺小静脈閉塞やリンパ管拡張といった予後不良に関連する所見を認めた。シロリムス全身投与を行っていたが、肺静脈に内膜肥厚を認め、特に肺小静脈の内膜病変は重度であった。一方、肺小動脈の病変は中膜肥厚にとどまり動脈と静脈の病変の程度に乖離を認め、シロリムスによる影響も示唆された。