講演情報
[II-P03-3-02]小児先天性心疾患患者に対するイバブラジンの使用経験と有効性
○戸田 孝子, 坂口 平馬, 伊藤 裕貴, 黒嵜 健一 (国立循環器病研究センター 小児循環器内科)
キーワード:
イバブラジン、先天性心疾患、心不全
【背景】イバブラジンは陰性変力作用を伴わず心拍数を減少させ、成人心不全治療で効果が示されている。また、小児拡張型心筋症に対する有効性が報告され、米国では小児適応が認められているが、本邦での報告は少なく、特に先天性心疾患 (CHD) 症例に関する報告は少ない。【目的】当院での小児CHD心不全症例に対するイバブラジンの効果と安全性を検討すること。【対象と方法】2021年1月から2024年12月に、既存の抗心不全治療で改善が得られず、イバブラジンを投与されたCHD患者11例。患者背景、導入時年齢、体重、内服量と投与前後での心拍数、BNP値、臨床経過、有害事象について、診療録より後方視的に検討した。【結果】男児4例、女児7例。疾患はHLHSおよびHLHS類縁疾患5例、DILV・CoA 3例、その他3例であった。また、両側肺動脈絞扼術後3例、Norwood術後5例、Glenn術後1例、Fontan術後2例であった。イバブラジン導入時の年齢中央値は0.4 (0.1-9.6) 歳、体重中央値は4.3 (2.5-20.8) kgであった。イバブラジン初期投与量は0.04 (0.01-0.10) mg/kg/day、維持投与量は0.18 (0.10-0.36) mg/kg/dayであった。投与前後での平均心拍数は143.0±22.8/分から121.5±13.2/分へ減少した(p=0.003)。BNP値は674.1±405.7 pg/mlから267.1±132.2 pg/mlへ低下した (p=0.002)。導入後、哺乳・食思の改善を認め、乳幼児9例において体重中央値は4.2 (2.5-6.5) kgから1ヶ月後 4.4 (3.4-7.0) kgへ増加した(p=0.015)。9例でPDE3阻害薬を中止でき、8例で退院可能であり、3例で次期治療(Norwood手術1例、心臓再同期療法2例)を行なった。βブロッカー併用例1例で徐脈のため減量を要したが、その他重大な有害事象は認めなかった。【まとめ】イバブラジンは心機能低下例にも安全に導入可能であり、徐拍化により臨床症状の改善を認めた。右室型単心室や術後症例などの小児CHD症例にも有効であった。