講演情報

[II-P03-3-03]小児心不全治療において“Fantastic Four”は標準治療となりうるか-重症心筋疾患への挑戦

北川 篤史1,2, 宮城 佳史1, 加藤 寛幸1 (1.榛原総合病院 小児科, 2.北里大学 医学部 小児科学)
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キーワード:

心不全、左室心筋緻密化障害、ARNI

【背景】心不全の診療ガイドラインに基づく標準治療において、“Fantastic Four”と呼ばれるアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬を用いることが推奨されている。一方で小児心不全治療においては、病態の複雑性や保険適応などの問題から、いまだにエビデンスが乏しいのが現状である。【症例】生来健康な12歳男児。学校心臓検診で左房負荷を指摘され、前医より当科を紹介受診した。心エコーで左室中部から心尖部まで著明に発達した肉柱群を認め、左室心筋緻密化障害の診断となった。左室内腔の狭小化と重度の僧帽弁逆流および左房の拡大を認め、EF=45%、E/A=3.74、E/e’=9.8、TRPG=92mmHgで、NT-proBNPは421pg/mLであった。安静時心拍数が50/分程度であったためβ遮断薬の導入は行わず、利尿薬とACE阻害薬で治療を開始した。その後、心拡大の軽減とNT-proBNPは200pg/mLまで低下傾向を示した。しかし、治療開始10か月後に再びNT-proBNPの上昇と心不全症状の増悪を認めたため、ACE阻害薬をARNIに変更した。薬剤切り替えによる有害事象はなく、半年後にはNT-proBNP 124pg/mLまで改善を認め、運動を含めた学校生活も普段通り行えている。【結語】左室心筋緻密化障害による心不全に対してARNI導入を行い、NT-proBNPと心不全症状の改善を認めた。一方でその他の“Fantastic Four”であるβ遮断薬導入には心拍数や血圧の注意深い観察が必要であり、SGLT2阻害薬に関しては小児適応がいまだないことが現状であり今後の課題であると考えられた。