講演情報

[II-P03-3-04]当院における慢性心不全に対するサクビトリルバルサルタンの使用経験

高橋 誉弘1, 佐藤 浩之1, 木村 寛太郎1, 赤塚 祐介1, 加護 祐久1, 田中 登2, 松井 こと子1, 福永 英生1, 東海林 宏道1 (1.順天堂大学 小児科, 2.鳥取県立中央病院 小児科)
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キーワード:

サクビトリルバルサルタン、慢性心不全、腎機能障害

【背景】サクビトリルバルサルタンはARNIに分類され、サクビトリルによるネプリライシン阻害作用とバルサルタンによるAT1受容体拮抗作用の2つの薬理作用を有する新薬である。これらは輸入細動脈の拡張による腎血流量の増加や、輸出細動脈の拡張による糸球体内圧の低下など、作用機序として腎機能障害は起こりにくいとされている。本邦では2024年2月に小児慢性心不全の適応となったが、まだ知見は浅い現状である。当院での使用状況について、診療録を用いて後方視的に検討した。
【結果】導入は6例に行い、うち5例は乳幼児であった。3/6例にエナラプリルの先行使用があったが、増量困難でありサクビトリルバルサルタンへの切り替えを行なった。対象疾患はDCM、MRの乳児2例、cAVSD根治術後、MRの乳児1例、DORV、AP window根治術後、window残存リークの乳児1例、critical AS、MRの幼児1例、アントラサイクリン心筋症、MRの12歳1例であった。服用法は3例で粒状錠を脱カプセルし粒単位での内服、3例で錠剤の粉砕とした。全例で開始用量の1/4から1/2量で導入を開始し、4-7日間隔での増量ペースとした。4/6例で開始用量以上に増量可能であった。有害事象は3例で確認され、うち2例は、それぞれ腎機能障害と心不全の急性増悪により使用を中止した。他1例は肝機能障害を認めたが自然軽快し、使用を継続した。使用を継続した4例は全例でproBNPの低下を確認した。 治療効果として、2例でMRの改善を確認した。
【考察】当院におけるサクビトリルバルサルタンの使用状況は、乳幼児例にも積極的に導入を試みており、合併疾患はMRが主であった。導入を断念した一因には、増量ペースや低心機能が関与している可能性が考えられ、症例毎に忍容性を長期的に見極める必要があると考えられた。小児慢性心不全において、ARNIは有効であると考えられるが、年齢や心機能、合併疾患の程度など、個々の状態に合わせた導入の統一化が必要と思われた。