講演情報

[II-P03-3-08]フォンタン手術との同時施行で補助人工心臓を装着したグレン術後の重症心不全症例

浦田 晋1, 藪崎 将1, 酒井 瞭1, 浅井 ゆみこ1, 三崎 泰志1, 柴田 深雪2, 金 基成1, 平田 康隆2, 小野 博1 (1.国立成育医療研究センター 循環器科, 2.国立成育医療研究センター 心臓血管外科)
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キーワード:

VAD、フォンタン循環、心臓移植

【背景】グレン(BDG)術後の重症心不全症例に対する補助人工心臓 (VAD)治療は、上下大静脈に生じる圧較差により体肺静脈側副血行路が発達するためチアノーゼが悪化し、また体肺動脈側副血行路の発達などによる容量負荷も悪化し、治療成績は不良である。VAD導入時にフォンタン循環を完成することでこれらの問題は改善し、治療成績は向上することが報告されている。小児用VADであるEXCOR® pediatric(以下、EXCOR)装着時にフォンタン手術を同時施行した2例について報告する 【症例】1. 両側房室弁左室挿入、左室型単心室の男児で、重度の僧帽弁逆流による心不全で月齢6にBDGおよび僧帽弁閉鎖術を行った。術後も心機能は改善せず1歳9か月時に体心室へのEXCOR装着およびフォンタン(14mm導管)手術を行った。術前は平均肺動脈圧(mPAP)18mmHg, 肺血管抵抗値(PVR)2.0U・m2であった。発達は伝歩までと遅滞し、経腸栄養は吸収不良により確立が困難であった。EXCOR装着36か月後にフォンタン循環不全による多臓器不全で死亡した。 2. 左心低形成症候群類縁疾患の男児で心室機能低下のため月齢2よりミルリノンを投与していた。月齢9にBDG手術を行うもミルリノンは中止できず、1歳5か月時にフォンタン(14mm導管)手術とともに体心室に遠心ポンプを装着した。術前はmPAP 14mmHg, Rp 3.3U・m2であった。術後5日目にEXCORポンプに変更した。周術期に難治性乳び胸のためリンパ管造影およびコイル塞栓術を行い、また術後8か月時に蛋白漏出性胃腸症を発症したが、一時的にステロイドを用いて寛解した。現在は3歳で心臓移植待機中である【考察】今回経験した2例は、いずれも2歳未満でEXCORを装着し、経過中にフォンタン合併症を生じた。日本では心臓移植が長期待機となることから、低年齢での実施には十分な検討が必要である