講演情報
[II-P03-3-09]補助人工心臓装着中のFontan患者に発症した蛋白漏出性胃腸症に対し, 経皮的バルーン肺動脈形成術が有効であった一例
○藪崎 将, 浦田 晋, 浅井 ゆみこ, 酒井 瞭, 三崎 泰志, 金 基成, 小野 博 (国立成育医療研究センター)
キーワード:
Fontan循環、補助人工心臓、蛋白漏出性胃腸症
【背景】単心室循環の重症心不全に対して体心室に補助人工心臓(VAD)を導入し,右心系はFontan循環とすることが安定した管理につながることがあるが,一方でFontan術後症候群の懸念がある.今回,Glenn術後の重症心不全に対してFontan手術とVAD導入後に蛋白漏出性胃腸症(PLE)を発症し,経皮的バルーン肺動脈形成術(BAP)により改善した1例を経験したため報告する.【症例】症例は左心低形成症候群類縁疾患の2歳男児.2ヶ月時より両心室機能低下を認めた.10ヶ月時にDamus-Kaye-Stansel吻合,Glenn,肺動脈形成術を施行,術後左肺動脈狭窄に対し11ヶ月時にステント(Express® vascular SD 6mm*18mm)を留置した.1歳2か月時に心不全が悪化しカテコラミン依存となった.心臓移植適応判定を得て,1歳6ヶ月時、体心室にVADを装着,右心系はFontan循環とした.1歳9ヶ月時の心臓カテーテル検査(CC)では中心静脈圧(CVP) 18mmHg,平均肺動脈圧 17mmHg,肺血管抵抗値 1.84U・m2,経肺圧 6mmHgであったため,肺血管拡張薬を増量した.2歳0ヶ月より血清アルブミン値が低下し,顔面や体幹の浮腫を認めた.消化管シンチグラフィにて,回盲部に集積がありPLEと診断.低脂肪食,薬物治療を行ったが,頻回のアルブミン補充を必要とした.2歳3ヶ月時のCCでCVP 16mmHgであり,LPAステント近位部は2.8mm(参照血管径6.6mm)と狭窄を認め,血管形成用バルーン(CONQUEST® 8mm*20mm)を用いてBAP施行し,狭窄部は 3.5mm(125%)に拡張し,CVP 15mmHgへ低下した.術後より浮腫,アルブミン値は改善し,ステロイド,アルブミン投与は不要となった.【考察】Fontan循環に対するVAD治療において, 心臓移植が長期待機となる日本ではFontan術後症候群を発症する可能性がある.本症例は左肺動脈狭窄がCVPの上昇につながり,PLEの一因になったと考えられた. 同治療の経過中のFontan術後症候群も原因となる病変の評価を行い,積極的に治療すべきである.