講演情報
[II-P03-4-02]当院における術後心嚢水貯留予防への取り組み
○寺田 貴史1, 櫻井 一1, 山本 裕介1, 大橋 直樹2, 加藤 太一2, 山本 英範2, 郷 清貴2, 森本 美仁2, 鈴木 謙太郎2, 六鹿 雅登1 (1.名古屋大学 医学部 医学系研究科 心臓外科学, 2.名古屋大学 医学部 医学系研究科 小児科学)
キーワード:
術後心嚢水、心膜切開後症候群、周術期管理
【目的】先天性心疾患術後、一定の割合で心膜切開後症候群による心嚢水貯留を認め、抗炎症薬や利尿強化、場合により穿刺や開創によるドレナージを要する。当院では、小児循環器センター立ち上げに伴い比較的大きめの患児の軽症例に対する手術から導入したが、術後の心嚢水貯留に対応を要する症例の割合が多く、背側心膜を胸腔に向け開放する対応を開始したため、この効果を検証した。【方法】2023年7月から2025年1月までに当院にて先天性心疾患に対して開心術を施行した25歳未満の症例につき診療録をもとに後方視的に検討した。【成績】該当症例は33例で、23例が男児、平均年齢10.4歳であった。診断はVSD19例、ASD6例、術後の肺動脈狭窄または閉鎖不全が5例、他3例で、再手術が6例であった。VSD閉鎖19例、ASD閉鎖6例、PVR(RVOTR)5例を施行し、平均体外循環、心停止時間は91.8、51.4分で、3例に輸血を要した。術後心嚢水貯留を13例(VSD9,ASD3,pAVSD1例)に認めた。心嚢水指摘時の体重は術前日96.1±3%で、7例にステロイド治療を開始した。改善を認めなかった2例に開創ドレナージを要した。術後心嚢水を認めた症例は認めなかった症例に比して体外循環時間が有意に短かった。後半5例の初回手術例に、後方心膜を左胸腔と交通させる切開を追加し、以降術後の心嚢水貯留を認めていない。【結論】術後心嚢水貯留は心膜切開後の炎症に起因する要素もあり、心嚢液指摘時点で体重は術前日-4%程度と除水は進んでおり、ステロイドなどの治療を要した。背側心膜開窓は簡易な手技で術後の心嚢水貯留を予防できる可能性があり、継続しつつその効果と有用性につき検討を続けたい。