講演情報

[II-P03-4-03]先天性心疾患術後乳び胸水に対する経腸栄養中止の効果:当院における5年間の検討

横山 亮平1, 鈴木 彩代1, 永田 弾2, 連 翔太1, 白水 優光1, 佐藤 正規1, 田尾 克生1, 倉岡 彩子1, 佐川 浩一1 (1.福岡市立こども病院 循環器科, 2.福岡市立こども病院 循環器集中治療科)
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キーワード:

乳び胸水、経腸栄養中止、先天性心疾患術後

【背景】乳び胸水は先天性心疾患術後の重篤な合併症であり予後に影響する。脂肪制限や薬物療法で効果不十分な場合、経腸栄養の中止(Nir per Os: NPO)が検討されるがその有効性、適応、期間は明確ではなく、長期NPOでは栄養障害や消化管粘膜萎縮、経静脈栄養に伴う肝障害等が問題となる。【目的】当院の乳び胸水治療としてのNPOの現状とその効果について明らかにする。【方法】対象は2019年1月1日から2024年12月31日に当院で心臓手術後に胸水検査で乳び胸水と診断された145名。診療録をもとに患者背景、NPOの有無を含む治療内容、ドレーン留置期間・排液量、転帰を調査し、乳び胸水診断前からNPOを施行していた例を含むNPOあり群(74例)、NPOなし群(71例)に分け比較した。また、乳び胸水診断後にNPOを開始した群(64例)ではNPO開始5日以内にドレーン抜去できたNPO著効群(6例)と、NPO非著効群(58例)に分け比較した。【結果】NPO群は術後3日、乳び胸診断後2日(いずれも中央値)でNPOが開始され、期間の中央値は6日であった。14日以上の長期NPO例は9例(14%)で、その中央値は17日であった。NPOあり群はNPOなし群に比べ、手術時日齢が有意に低く(中央値 31日vs 171日,p<0.05)、フォンタン手術例はNPOなし群に多かった(5/74例 vs 21/71例,p<0.05)。NPO著効群とNPO非著効群では手術時日齢、診断、術式等の患者背景に有意差はなく、NPO著効群ではNPO前に多量の胸水流出が認められた(20ml/kg/日以上:5例、10ml/kg/日以上:1例)が、NPO後3日目までに消失または半減し、早期のドレーン抜去(中央値3.5日)が可能で、NPO期間も中央値4日と短期間であった。【考察】乳び胸水診断例の約半数でNPOが施行され、年長児よりも特に乳児例に多かった。NPO著効群は9.4%と少数ながら、胸水が多量でもNPO開始直後に速やかに減少する傾向を示した。一方でこのような傾向がない長期NPO施行例も14%あり、NPO継続期間に関しては議論の余地がある。