講演情報

[II-P03-4-07]ジャックナイフ位で手術を行ったグレン循環患者の2症例。

八木 耕平1, 大軒 健彦1, 佐藤 大二郎1, 星 菜美子1, 川合 英一郎1, 新田 恩1, 崔 禎浩2, 小泉 拓3, 五十嵐 あゆ子4, 小澤 晃1 (1.宮城県立こども病院 循環器科, 2.宮城県立こども病院 心臓血管外科, 3.宮城県立こども病院 集中治療科, 4.宮城県立こども病院 麻酔科)
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キーワード:

グレン循環、ジャックナイフ体位、術中管理

先天性心疾患を有する患児に対し、他の先天性疾患の治療を行うことはしばしばみられる。しかしながら、グレン循環の時期に鎖肛の根治術を行うことは頻度として多くはない。両方向性グレン術後の循環は不安定であり、疼痛による肺高血圧発作や低酸素血症などに注意をする必要があるが、体位による変動についての報告は少ない。今回、両方向グレン術後の患児らに対して、鎖肛の根治術を行った2症例を経験したので報告する。症例1はVACTERL連合、高位鎖肛、両大血管右室起始症(DORV)、大動脈離断症(IAA)、心房中隔欠損症(ASD)、拡大大動脈弓再建術(EAAA)と両方向性グレン術後の児。鎖肛根治術前の評価では、上大静脈圧(SVC圧) 平均 18 mmHgとやや高値であった。全身麻酔後、ジャックナイフ体位となり手術を開始。体位変更から約5時間半経過した時点で徐脈、PEAとなりCPRを開始。ボスミン投与を行いCPR開始から4分後にROSCした。PICU入室しROSC後の評価では神経学的後遺症は明らかではなく、翌日に鎖肛根治術を完遂した。翌日の術中は右頸部よりCV挿入しSVC圧のモニタリングを施行した。ジャックナイフ体位への体位変換前後で右SVC圧が 16 mmHg から 22 mmHgに上昇することが確認された。手術体位によるSVC圧の上昇がグレン循環の破綻の一要因と推察された。症例2はKabuki症候群、左心低形成症候群(HLHS)、ASD、部分肺静脈還流異常症(PAPVC)、ノーウッド手術、三尖弁形成術、両方向性グレン術後の児。鎖肛根治術前の評価ではSVC圧は16 mmHgであった。術中はCV挿入しSVC圧をモニタリングした。体位変更直後にSVC圧18 mmHg程度まで上昇することはあったがその後は平均 15 mmHgで経過。特記合併症無く手術は終了した。グレン循環を有する児においては、体位によるSVC圧の上昇が循環破綻を来す一因となる可能性があり、注意が必要である。