講演情報

[II-P03-4-08]フォンタン術後患者におけるワルファリン投与量とPT-INRの関連性:単施設後方視的研究

親谷 佳佑, 川口 直樹, 鈴木 彩代, 村岡 衛, 連 翔太, 白水 優光, 佐藤 正規, 倉岡 彩子, 佐川 浩一 (福岡市立こども病院 循環器科)
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キーワード:

Fontan、ワルファリン、PT-INR

【背景】当施設ではFontan手術後の患者に対し、アスピリン(2-5mg/kg/day)とワルファリン(目標PT-INR値: 1.7-2.2)の併用療法を実施している。ワルファリンの必要量には、人種や年齢、血行動態など多数の因子が影響すると報告されている。既報のワルファリンの投与量の予測式は遺伝子検査が必要など、日常臨床に適応するのは困難である。
【目的】同一民族のFontan型手術後患者を対象に、ワルファリン投与量とPT-INRの関係・投与量に影響を与える因子を同定すること。
【方法】2010年1月から2023年12月までに当施設でFontan型手術を実施した患者を対象とした単施設後方視的研究。術後初回カテーテル入院時の患者データを収集し、PT-INR値に基づき低値群(<1.7)、目標範囲群(1.7-2.2)、高値群(>2.2)に分類して解析を行った。
【結果】356例が解析対象となり(術後中央値:低値群6か月、目標範囲群7か月、高値群6か月)、66.3%(236例)が低値群、26.4%(94例)が目標範囲群、7.3%(26例)が高値群であった。ワルファリン中央投与量[四分位範囲]は、それぞれ0.07 [0.06, 0.09]、0.07 [0.06, 0.09]、0.08 [0.07, 0.09] mg/kg/dayであり、群間で有意差を認めなかった(p=0.391)。順序ロジスティック回帰分析では、γGTPがPT-INR値と弱い正の関連を示した(オッズ比1.009、95%CI: 1.002-1.015)。目標範囲群におけるステップワイズ法による重回帰分析では、BUNのみが最終モデルに残ったものの有意ではなく(係数0.0012、p=0.136)、モデルの説明力も極めて低かった(調整済みR2=0.013)。
【考察・結論】本研究により、Fontan術後患者におけるワルファリン投与量とPT-INRの関係は、単純な用量反応関係では説明できないことが示された。特筆すべきは、PT-INR値の違いに対するワルファリン中央投与量の差が、低値群と高値群で0.01 mg/kg/dayと極めて小さいことである。これは、個々の患者で異なる薬物動態や感受性が存在する可能性を示唆している。