講演情報
[II-P03-5-05]パッチワーク法の妥当性の検証: 小児急性心筋炎の診断・治療方針決定における自由呼吸下MOLLI画像を用いたT1 mappingの応用
○門屋 卓己1, 佐藤 慶介1, 沼田 寛1,2, 眞田 和哉1, 石垣 瑞彦1, 芳本 潤1,2, 満下 紀恵1, 金 成海1, 新居 正基1, 田中 靖彦1 (1.静岡県立こども病院 循環器科, 2.静岡県立こども病院 不整脈内科)
キーワード:
T1 mapping、心筋炎、SS-A抗体
【背景】T1 mappingやT2 mappingなどのparametric mappingは,心臓MRIを用いた非侵襲的な心筋組織の評価に用いられており,成人領域では急性心筋炎の診断を中心に広く普及している.しかしながら, T1 mappingを行う際に使用するMOLLI画像が息止め撮影を要することから,小児領域においては普及が進んでいない.そこで,自由呼吸下に複数回撮影したMOLLI画像からT1 mappingを可能にするパッチワーク法を考案した.【目的】小児急性心筋炎の診断と治療方針決定における自由呼吸下MOLLI画像を用いたT1 mappingの応用事例を通してパッチワーク法の妥当性を検討すること.【症例1】7歳女児.発熱後の嘔吐・倦怠感からショック状態に陥り,当院でECMO管理を4日間施行した.離脱後に心臓MRIを行ったところ,Lake Luise Criteria 2018年改訂版(LLC 2018 update)の2項目中2項目を満たし,急性心筋炎と診断した.このときのnative T1 mappingは,従来法で1135±77ms,パッチワーク法で1157±121msと,両者に有意な差はなかった.【症例2】2か月女児.嘔吐・哺乳不良を契機に,心エコーで心拡大・心室壁菲薄化・心収縮低下があり,拡張型心筋症の疑いで当院搬送となった.心臓MRIでLLC 2018 updateの2項目中2項目を満たし,急性心筋炎と診断した.血液検査ではSS-A抗体が陽性であった.このときnative T1=1278±126ms,T2=76±13ms,ECV=45±6%であり,ステロイドパルスを開始したところ,心収縮は改善した.集中治療管理の離脱とステロイド治療漸減を考慮するタイミングで心臓MRIを再検し,native T1=1143±61ms,T2=70±9ms,ECV=41±6%をもって,追加のステロイドパルスを行い漸減の方針とした.【結語】パッチワーク法を用いたT1 mappingは,数値的にも方法論的にも急性心筋炎の診断における妥当性が確認された.さらに,急性心筋炎の診断のみならず病勢評価にも応用可能であった.