講演情報

[II-P03-5-07]内科的治療で良好な経過を示した拡張型心筋症乳児例における心臓MRI所見の変化

森田 裕介, 五味 遥, 古井 貞浩, 岡 健介, 松原 大輔, 横溝 亜希子, 関 満, 佐藤 智幸, 田島 敏広 (自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児科)
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キーワード:

DCM、CMR、LGE

【はじめに】拡張型心筋症(DCM)は予後不良な疾患だが、小児例の約2割は左室径と心機能の改善が得られるとされる。乳児DCM症例において心血管磁気共鳴(CMR)画像の経時的変化を検討した報告は少ない。【症例】7ヶ月男児。活気不良、経口摂取不良を主訴に受診。体重 7.5kg (-0.7SD)で3ヶ月前から体重増加不良を認めた。明らかな先行感染なし。胸部Xp写真でCTR 76%と著明な心拡大と肺うっ血所見あり。BNP 8,232 pg/mLと上昇し、心エコーでLVDd 56mm (219% of normal)、LVEF 22%、僧帽弁逆流は重度であった。心構造異常はなく、DCMと診断した。入院後、高流量酸素療法、強心薬、利尿薬で心不全治療を開始。入院10日目よりエナラプリルを導入、入院53日目よりカルベジロールを導入。185日目(生後13か月)の退院時点でエナプリル 0.2mg/kg、カルベジロール 0.4mg/kgまで増量して、CTR 60%、BNP 355 pg/mLまで改善したが、LVDd 52mm(202% of normal)、LVEF 34%、LVGS -9.0と心機能の改善は軽度にとどまった。退院前に施行したCMRで心室中隔中層に遅延造影(LGE)と後壁にNative T1 map、ECV mapの上昇所見を認め、心筋障害所見を認めていた。外来ではエナラプリル、カルベジロールとも体重増加に合わせて増量した。退院後半年ごろより左室径の縮小傾向を示し、退院後1年ではCTR 53%、LVDd 35mm (123% of normal)、LVEF 62%、LVGS-18と改善し、CMRでも前回指摘されたLGE、Native T1 map所見は残存するもののECV mapは正常化していた。現在も内科的治療を継続中である。【考察】本症例では良好な経過を得ているが、LGE陽性所見は残存していた。成人DCMではLGEは通常消失しにくいとされるが、LGE陽性の75%が心イベントなく経過したとの報告もある。一方、経時的なLGEの進行は心機能悪化のリスクとされる。乳児DCM症例でもCMRでの評価は可能であり、予後予測や治療方針決定の指標となり得る。