講演情報
[II-P03-5-09]心臓MRI検査における房室弁の流量計測について
○今井 翔1, 名和 智裕2, 提島 丈雄2, 前田 昂大2, 澤田 まどか2, 高室 基樹2, 東谷 佳祐2 (1.北海道立子ども総合医療・療育センター 放射線部, 2.北海道立子ども総合医療・療育センター 小児循環器内科)
キーワード:
房室弁、MRI、血流評価
【目的】房室弁の血流評価は,肺静脈血流量や大静脈血流量の確認,ASDやVSDなどの短絡量の確認など使用頻度は高い.しかしながら弁運動や,弁逆流により計測誤差が生じやすい.SCMRガイドラインにおいても,撮影位置の違いによる計測値への影響は十分に検討されていない.本研究では,房室弁の撮影位置の違いが計測結果に及ぼす影響を明らかにし,最適な計測位置を検討することを目的とした.【方法】2024年にCMRを撮影したエコー下で心室内短絡,房室弁逆流を認めない40例(平均年齢8.8±9.7歳)を対象とした.収縮末期の房室弁に対し,弁輪部(以下,mid),弁輪部より1スライス分(5~8mm)心尖部側(以下,apex),1スライス分心房側(以下,base)の3箇所で撮影を行った.各撮影断面において,net flow (forward flow-backward flow)を2回計測し,平均値を算出した(L/min/m2).得られた値を大動脈,肺動脈のnet flowと比較し,相違について検討を行った.統計解析には分散分析およびShaffer’s t-testを用い,有意水準は5%とした.【結果】net flowは,大動脈が3.5±0.7に対し,僧帽弁はmid,apex,baseの順に3.5±0.7,3.3±0.6,3.3±0.6となり,大動脈とapex,大動脈とbase間で有意差を認めた.同様に,肺動脈が3.6±0.8に対し,三尖弁は3.6±0.9,3.4±0.8,3.5±0.8となり,肺動脈とapex,肺動脈とbase間で有意差を認めた.大血管に対する平均誤差率(%)は大動脈と僧帽弁で順に2.6±2.2,7.5±5.6,6.0±5.7となり,肺動脈と三尖弁では2.7±2.4,8.5±8.5,5.5±5.7となった.【考察】房室弁のapexやbaseでは,弁の動きや心房収縮により血流方向が変化し,層流が維持できない可能性がある.これらの要因により,計測時に通過血流の範囲が不明瞭となり,誤差が大きくなったと考えられる.【結語】房室弁のnet flow計測は,収縮末期の弁輪部で最も精度良く計測できることが示唆された.