講演情報

[II-PD7-3]成人先天性心疾患のVAD・心臓移植手術

盤井 成光1, 柴垣 圭佑1, 富永 佑児1, 小森 元貴1, 伊藤 裕貴2, 坂口 平馬2, 黒嵜 健一2 (1.国立循環器病研究センター 小児心臓外科, 2.国立循環器病研究センター 小児循環器内科)
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キーワード:

成人先天性心疾患、心移植、補助人工心臓

【はじめに】成人先天性心疾患(ACHD)患者の増加に伴い、遠隔期に重症心不全を発症する症例も増えつつある。しかし、こうした症例への心臓移植は依然として機会が限られており、その実態も明らかではない。今回、ACHD症例におけるVAD・心臓移植手術の現状と課題について検討した。【対象】対象は2011年以降、当院で心移植希望登録を行い補助人工心臓(VAD)装着したACHD症例7例。疾患内訳は修正大血管転位4例(ダブルスイッチ術後2例、三尖弁置換術後2例)、完全大血管転位3例(心房スイッチ術後2例、動脈スイッチ術後1例)。移植登録時年齢は中央値(最小-最大);34(30-56)才。開胸手術回数は4(3-7)回。【結果】VAD装着後病院死亡2例。いずれもVAD装着前から収縮性心膜炎・拘束性障害に伴うLOSにより肝腎機能障害、難治性胸腹水を生じていた症例で、VAD装着後も全身状態改善せず(1例はVAD inflow failureも起因)、感染を契機に失った。VAD装着後移植待機中1例(待機期間5.1年)。心移植施行は4例あり、VAD装着後待機期間は4.3(3.4-5.5)年。うち心移植後病院死亡2例。いずれも5回以上の再開胸手術歴があり、心周囲の癒着剥離に難渋し長時間手術となった症例で、術後他臓器障害(腹部臓器障害、敗血症等)を合併して失った。他の2例は体心室収縮不全に対しVAD装着し、開胸手術回数も少なかった症例で、移植後9年および2年で健存している。【まとめ】ACHDの重症心不全は拡張障害が主体で他臓器障害を合併している症例が多く、VAD装着や心移植の成績は不良であった。それらは心形態の問題や複数回の再開胸手術による影響も大きく、今後はACHDに特化した治療戦略や経験の蓄積が必要である。