講演情報
[II-PD7-5]移植後を見据えた小児重症心不全患者の神経学的評価の限界
○石田 秀和1, 成田 淳1,2, 石井 良1, 廣瀬 将樹1, 加藤 温子1, 林田 由伽1, 末廣 友里1, 馬場 達也1, 渡邉 卓次2, 木戸 高志2, 上野 高義2 (1.大阪大学大学院 医学系研究科 小児科学, 2.大阪大学大学院 医学系研究科 心臓血管外科学)
キーワード:
心臓移植、神経、合併症
【背景と現状】
心臓移植適応の判定において高度の精神神経障害は適応外となるため、その評価は重要である。学童期以降の症例であれば、乳幼児期の精神運動発達歴に加え、発達検査や頭部画像等を評価することで、移植適応外となりうる精神神経合併症の鑑別を一定の精度で行うことができる。一方で新生児期や乳児期に急性増悪した重症心不全においては、病前の発達評価も曖昧で鎮静管理下となっていることも多く、正確な神経学的評価は困難である。特に発症直後にECMO管理となるような症例では、適応検討のためにかけられる時間にも限界があり、現実的には頭部CT、各種代謝検査、病前の生活聴取等でしか判断できないことがある。当然そのようなケースでは移植待機中にも定期的に精神運動発達評価を行い、移植適応の範囲内であることを確認し続けながら移植まで臨むことになるが、2-3歳といった幼児期早期の移植例では、学童期以降の発達予後を完全には予測できるはずもない。本セッションでは、当院における小児心臓移植後症例の神経学的予後に関連する経験を示してみなさんと議論したい。
【当院での検討】
2000年から2024年に18歳未満で心臓移植を受けた79例について後方視的に調査した。発症年齢中央値2歳(IQR, 0-6歳)、移植時年齢中央値6歳(IQR, 2-13)であった。移植後に何らかの精神神経合併症を認めたのが31例(39%)で、発達遅滞18例、自閉症スペクトラム6例、VAD関連合併症5例等であった。就学年齢以上に達している71例中69例(97%)で安定的な就学が出来ていた一方で、18歳以上に達している39例のうち10例(26%)が未就学及び未就業であった。移植後精神神経合併症は有意に未就学・未就業に関連していた。(P=0.0018)【まとめ】移植後に顕在化する発達遅滞や自閉症スペクトラムは一定数認められた。成人に達した例の未就学・未就業率は米国の報告と同等であり、諸外国でも同様の問題を抱えているものと考えられた。
心臓移植適応の判定において高度の精神神経障害は適応外となるため、その評価は重要である。学童期以降の症例であれば、乳幼児期の精神運動発達歴に加え、発達検査や頭部画像等を評価することで、移植適応外となりうる精神神経合併症の鑑別を一定の精度で行うことができる。一方で新生児期や乳児期に急性増悪した重症心不全においては、病前の発達評価も曖昧で鎮静管理下となっていることも多く、正確な神経学的評価は困難である。特に発症直後にECMO管理となるような症例では、適応検討のためにかけられる時間にも限界があり、現実的には頭部CT、各種代謝検査、病前の生活聴取等でしか判断できないことがある。当然そのようなケースでは移植待機中にも定期的に精神運動発達評価を行い、移植適応の範囲内であることを確認し続けながら移植まで臨むことになるが、2-3歳といった幼児期早期の移植例では、学童期以降の発達予後を完全には予測できるはずもない。本セッションでは、当院における小児心臓移植後症例の神経学的予後に関連する経験を示してみなさんと議論したい。
【当院での検討】
2000年から2024年に18歳未満で心臓移植を受けた79例について後方視的に調査した。発症年齢中央値2歳(IQR, 0-6歳)、移植時年齢中央値6歳(IQR, 2-13)であった。移植後に何らかの精神神経合併症を認めたのが31例(39%)で、発達遅滞18例、自閉症スペクトラム6例、VAD関連合併症5例等であった。就学年齢以上に達している71例中69例(97%)で安定的な就学が出来ていた一方で、18歳以上に達している39例のうち10例(26%)が未就学及び未就業であった。移植後精神神経合併症は有意に未就学・未就業に関連していた。(P=0.0018)【まとめ】移植後に顕在化する発達遅滞や自閉症スペクトラムは一定数認められた。成人に達した例の未就学・未就業率は米国の報告と同等であり、諸外国でも同様の問題を抱えているものと考えられた。