講演情報
[II-PD8-1]右心不全を徹底的に診断する ー心エコー図学的な視点からー
○宇都宮 裕人 (広島大学大学院医系科学研究科 循環器内科学)
キーワード:
右室機能、3D心エコー図、負荷心エコー図
右心系は右房・三尖弁・右室・肺動脈弁で構成され,全身からの静脈還流を引き受け,これらの静脈血を肺動脈経由で肺へ還流させる役割を担っている. 全身に血液を拍出する左心系と異なり,少ない仕事量で血液を駆出することが出来る. 通常の短軸像では,右室は左室の周囲に三日月状に巻き付いたような形状となっており,その壁厚は薄く(5mm以下),心尖部四腔像で見ると心尖部方向に全体がふいご様に運動して血液を押し出す仕組みになっている. すなわち,収縮期には三尖弁の弁輪が大きく心尖部方向に偏位する動きを示す. 右室は左室に比べて仕事量が少なくて済み,心筋量が少なく壁厚が薄いので,コンプライアンスが良いという利点を有する一方で,高い駆動圧を産みだすことは不得手である. そのため,三尖弁逆流による容量負荷によって右室の前負荷(=右室拡張末期容積)が増加しても右房圧上昇はしにくく,また,拡張末期容積が増加した分右室収縮が増強して一回拍出量が維持される(=Frank-Starling curve:バネの初期長を伸ばすと手を離した時の張力が増すのに似ている). つまり,前負荷上昇に対してはかなりの予備能を持っていると言える. 一方で,急性肺血栓塞栓症による圧負荷によち右室後負荷が上昇(肺動脈圧上昇,肺血管抵抗上昇,右室収縮末期壁応力増加)すると脆弱で,代償機構が働かないと一回拍出量が低下して左心系への循環が減少する. 通常,右室後負荷上昇の際には,右室壁応力の上昇を和らげ一回拍出量を維持する目的で代償機構が働く. 前負荷を上げて右室を球形に拡大させる,壁厚を増加させる等の変化が見られ,これを右室リモデリングと総称する. 重症三尖弁逆流では,右室容量負荷により拡張期優位に心室中隔扁平化が見られ右室の拡大が認められるが,一方で右室球形変形は生じにくいので円錐状拡大を呈する. 本講演では右室機能の解説と心エコー図による右心不全評価法について概説する.