講演情報
[II-PD8-3]肺動脈弁逆流による右心不全の介入時期を再考する
○山村 健一郎 (九州大学病院小児科)
キーワード:
肺動脈弁逆流、肺動脈弁置換術、右心不全
ファロー四徴症や類縁疾患術後の肺動脈弁逆流(PR)は右室容量負荷を引き起こし、心不全、不整脈、突然死の原因となる。これらの合併症を予防するために外科的もしくは経カテーテル的肺動脈弁置換術(PVR)が行われる。PVRの予後改善については一定のデータがあるが、介入時期に関する現行ガイドラインの妥当性には検討の余地がある。JCS, AHA/ACC, ESC等の現行ガイドラインは、症候性患者へのPVR推奨に加えて、無症候性でも右室拡大(RVEDVi ≧160 mL/m2, RVESVi ≧80 mL/m2など)を伴う場合にPVRを考慮するとしている。これまでは、MRIによる右室容積評価でPVR後に容積の正常化が期待できるラインを手術タイミングとしていた。最近は遅延造影やT1マッピングなど心筋線維化などの新たな指標が予後予測に有用との報告も増え、容積だけの評価に疑問を呈する声もある。また、QRS幅延長(>180ms)は心室性不整脈のリスク因子とされてきたが、fragmentationなど他の指標が有用との報告も増えている。早期PVRは右室拡大の改善や心室機能の維持といったメリットがある一方、若年でのPVRは術後の生体弁の劣化も早く、より早期に再々手術が必要となるという問題がある。経カテーテル的肺動脈弁置換術の登場により、人生における開胸の総数を減らす戦略が議論されている。人生100年時代のPVRのタイミングについては、マルチモーダルな評価を行い、個別化された介入時期と方法を検討する必要がある。治療戦略を常にアップデートしながら、長期的な転帰に関するさらなるデータの蓄積が求められる。