講演情報

[II-PD8-5]ACHDにおけるsubpulmonary RV failureに対する薬物療法を考える

石津 智子 (筑波大学 医学医療系 循環器内科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

心不全、薬物治療、利尿薬

肺動脈弁下右室不全(subpulmonary RV failure)に対する薬物療法は、基本的にうっ血の解除および右室収縮能の改善を目的とする。従来、急性期のうっ血に対しては即効性に優れるループ利尿薬が用いられてきたが、近年ではトルバプタン、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、SGLT2阻害薬などの有効性が急性期から注目されている。さらに、BNPの分解を抑制するサクビトリルとアンジオテンシンII受容体拮抗薬バルサルタンの複合体(ARNI)は、BNP濃度の増加を介した利尿効果が期待され、特に右心不全による慢性的な臓器うっ血による腎障害や肝機能障害への介入薬として有用との報告もある。これらの薬剤は血管内のみならず、組織内うっ血の解除という観点からも期待されている。ACHDを対象とした右心不全への薬物療法のエビデンスは乏しく、少数例の後ろ向き研究を対象としたシステマティックレビューやメタ解析が散見されるものの、大規模な前向き介入試験は存在しない。そのため、これら新規治療薬の適応となる病態・病期、投与量や治療戦略の最適化に関しては今後の課題である。本シンポジウムでは、具体的な症例を提示しながら、ACHDにおけるsubpulmonary RV failureに対する薬物療法の現状と展望について概説する。