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[II-SY5-1]高血圧、脂質異常、肥満に対する治療開始の適切なタイミングは?

菊池 透 (埼玉医科大学 小児科)
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キーワード:

肥満、高血圧、脂質異常症

肥満症、高血圧、脂質異常症などの非感染性疾患(Noncommunicable diseases: NCDs)の発症要因は、遺伝因子、母体の妊娠前~胎児期、乳幼児期の栄養と成長、そして、現在の生活習慣などである。すなわち、NCDsの起源は、母親の妊娠前まで遡ることができる。母体の肥満や高血糖、高出生体重児から幼児肥満、小児肥満を経て、成人の肥満や2型糖尿病に至るという軌跡があり、Pedersen仮説、早期Adiposity rebound(AR)、Tracking現象という概念で説明される。一方、母親のやせ、低出生体重児、幼児期の急激な体重増加、小児肥満を経て成人の肥満や2型糖尿病、高血圧に至るという軌跡もあり、Barker学説、早期AR、Tracking現象という概念で説明される。Tracking現象とは同一集団における個人の相対的なランクが長年にわたり維持される現象で、予防医学にあてはめると、小児が危険因子を持つと、成人まで維持される。小児の危険因子の測定値は、将来の測定値の予測因子となる。ということになる。また、肥満、高血圧、脂質異常は、軽度異常から高度異常まで連続的に進展する。すなわち、肥満→肥満症、正常高値血圧→高血圧、脂質異常→脂質異常症と進展していく。
NCDsへの治療開始の適切なタイミングは、学校健診や小児生活習慣病予防健診で軽度異常を発見した時である。この介入は、個人とその家庭を対象にした治療である。一方、本人と次世代のNCDsの予防のためは、集団を対象にした小中学生からの健康教育、思春期以降のプレコンセプションケアが重要である。
一方、小児期からの治療が必須の脂質異常症として、家族性高コレステロー血症(FH)を忘れてはいけない。日本小児脂質研究会では、「高槻宣言2024:Check Child Cholesterol,Save FH、こどものコレステロールをチェックして、FHを救おう!」で、FHスクリーニングの普及活動をしている。日常診療での総コレステロール測定を推進していきましょう。