講演情報

[II-SY5-2]小児肥満に対する運動介入

林 立申1,2 (1.茨城県立こども病院 小児循環器科, 2.筑波大学医学医療系 小児科)
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キーワード:

メタボリックシンドローム、運動療法、有酸素運動

【背景】身体活動は体力、心血管代謝機能、骨の健康、メンタルヘルスを向上させ、肥満を改善する効果があり、成長期にある肥満小児に対して運動を主体とする介入になることは必然的である。
【介入対象と方法】肥満児は就学前から増加傾向となり、学童期に新たに肥満に至るものが多い。この時期は運動習慣の形成における重要な時期でもあり、適切な介入タイミングといえる。運動療法は有酸素運動を基本とし、主観的運動強度(RPE) 11~15程度の強度とする。毎日60分程度の運動実施が推奨されている(小児肥満症診療ガイドライン 2017)。システマティックレビューでは運動療法を組み合わせた肥満介入は体重減少のほかに脂質代謝やインスリン抵抗性の改善効果に優れると報告されている(Ho, JAMA Pediatr 2013)。しかし多くの臨床研究は60分程度の運動を週3-5回以上実施するプログラムであり、日常臨床で実践することは容易ではない。我々は病院ベースで週1回、半年間の集団運動プログラムで対象小児の内臓脂肪量減少や炎症マーカの低下、アディポネクチン値の上昇を経験した(林、小児科学会 2014)。さらに週1回、計3か月間の短期プログラムでも肥満度低下が得られた(菊池、小児科学会 2019)。運動介入は低頻度、短期間であってもを積極的に行う意味はあると考える。ウォーキングの効果を検討した国内のRCTでは学校休日に10000歩以上歩行する介入で肥満度の改善が認められ(Yoshinaga, Pediatr Int 2020)、運動介入を実践する際に有効な追加戦略と思われる。
【展望】ICT、ウェアラブルデバイスを活用した個別最適化型の運動プログラムや、家庭・学校・医療機関の連携による包括的支援体制の構築が期待される。単なる体重減少にとどまらず、自己肯定感やQOLの改善といった心理社会的側面への配慮も、介入の質を高める鍵となる。