講演情報
[II-SY6-3]心腎連関から考える右心不全 - 静脈ドプラ波形評価から腎微小循環可視化への挑戦 -
○香山 京美1, 杉本 匡史2, 工藤 瑠於1, 桜井 陽明1, 瀬尾 由広1 (1.名古屋市立大学病院 循環器内科, 2.名古屋市立大学医学部付属 みらい光生病院)
キーワード:
右心不全、臓器うっ血、心腎連関
先天性心疾患で右心不全を呈する症例やフォンタン手術後症例では、総体液量増加や右心系負荷の代償として中心静脈圧が上昇し、肝臓・腸管・腎臓などの後方臓器うっ血が生じる。しかし、肺うっ血と異なり腹部臓器のうっ血は自覚症状が曖昧で、通常検査での評価が困難である。特に若年患者では症状が乏しく、症状出現時には重篤な肝不全に陥っている場合もあるため、適切な治療介入時期を逃さないためにも、後方臓器のうっ血評価法の確立は急務である。臨床現場では、前負荷の指標としてエコーで観察した下大静脈径から推定する中心静脈圧が用いられることが多い。しかし、その感度・特異度は70-80%程度と報告され、慢性的な体液貯留がある患者ではさらに低下するため、単独指標としての使用には注意が必要である。また、中心静脈圧が低値でも臓器血行動態がうっ血を示す症例があり、その予後は不良とされる。そこで、臓器うっ血を直接評価する手法に注目が集まっている。その一つが肝静脈、門脈、腎静脈のドプラ血流波形評価であり、うっ血解除の過程で著明な変化が観察される。特に腎静脈波形は心不全との関連知見が豊富で、退院時の波形パターンや経時的改善が予後と関連することが報告されている。近年は包括的評価法としてVExUSスコアの報告も増加しているが、心不全患者における臨床的意義については統一見解が得られていない。また、至適体液量評価にはうっ血だけでなく臓器灌流が維持される循環平衡点の把握も重要だが、その評価法は確立されていない。我々は低流速の微細血流を高分解能で検出可能なSuperb Microvascular Imaging(SMI)技術に着目した。SMIを用いて腎臓の皮質・髄質における動静脈血流を非侵襲的に可視化し、血流パターンを定量評価することで、腎灌流およびうっ血の包括的評価法確立を目指している。本発表では当施設の研究結果も含め、右心不全に伴う臓器うっ血評価の最前線について概説する。