講演情報
[II-SY6-4]心不全における腎-脳-心連関:臓器連関における神経性ネットワーク
○篠原 啓介 (九州大学 循環器内科)
キーワード:
心不全、心腎連関、交感神経系
心不全の病態には多くの要因が関与しており、その中でも交感神経系は中心的な制御機構の一つである。高血圧領域で注目されている腎デナベーションは、交感神経系に直接介入する治療法の一つであるが、その作用機序は未だ十分に解明されておらず、治療に対するレスポンダーの特定も明確ではない。腎交感神経は遠心路と求心路から構成されており、遠心路の活性化はレニン・アンジオテンシン系の亢進、ナトリウム再吸収の増加、腎血流の低下を引き起こす。一方、腎神経求心路の急性刺激は脳からの交感神経出力を増加させることが示されているが、その慢性的な意義は十分に解明されていない。また、腎障害が腎神経求心路を活性化することが報告されており、慢性腎臓病を合併する症例では、腎-脳の連関を介して交感神経の活性化が生じる可能性が示唆されている。我々は、心不全モデルラット(HFrEFおよびHFpEF)において、近年の基礎研究で開発された腎神経求心路の選択的除神経を行い、腎臓から脳への神経入力が病態に与える影響や、腎デナベーションの治療機序を検討した。その結果、腎神経求心路の選択的除神経は血圧の有意な変化を伴わずに、脳からの交感神経出力および末梢交感神経活動を抑制し、左室収縮能および拡張能を改善することが明らかとなった。本発表では、心不全における腎神経求心路の役割や腎デナベーションの有効性について、基礎および臨床の最新知見を交えて議論を深めたい。