講演情報

[II-TISL-1]AVSDの解剖と手術法

中野 俊秀 (福岡市立こども病院 心臓血管外科)
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キーワード:

atrioventricular septal defect、anatomy、surgery

<解剖>房室中隔欠損(Atrioventricular septal defect : AVSD)は心臓の発生段階で心内膜床の癒合不全、形成不全により心室中隔流入部が欠損しておこる病態である。これにより流入部の欠損による心室中隔上端の掘れこみ(scooping)、とそれによる左室流出路の狭小化(goose-neck sign)、大動脈弁が左右房室弁間ではなく前方に偏位する(unwedged position)の特徴がある。また房室結節は後方に偏位し心室中隔の上方に位置する。房室弁の形態と心室間交通の有無で3つのタイプに分かれる。1)完全型:心房間、心室間に交通を持ち、共通房室弁の形態をとる。2)部分型:心室間交通はなく、心房間交通(1次孔欠損)があり、房室弁はconnecting tongueで左右に分離される。3)中間型:房室弁はconnecting tongueで左右に分離されるが、少しの心室間交通を有する。房室弁の形態はvariationが大きいが、基本的に5つの弁尖(前、後共通弁尖, 左側尖、右前尖、右後尖)から構成される。完全型では共通前尖の形態と乳頭筋付着の様式でA型、B型、C型に分類される(Rastelli分類)。<手術法>AVSDの根治手術は1)心房間および心室間交通の閉鎖、2)房室弁の左右分割と形成からなる。完全型の根治手術では心房間、心室間交通を別々に閉鎖するTwo patch methodが一般的であるが、近年ではこれを簡略化したmodified single patch methodも症例により行われている。左側房室弁では前後共通弁尖の接合部はCleftとして残るため、これを縫合閉鎖する。術前より房室弁逆流を有する症例も少なくなく、追加の弁形成手技を要することも少なくない。