講演情報
[II-TRP1-1]重複障害を有する先天性心疾患患者を対象とした病院と福祉施設や教育機関との連携
○荻野 佳代, 森貞 敦子, 木谷 太一, 松繁 玄曉, 實川 美緒花, 増田 祥行, 林 知宏, 脇 研自, 新垣 義夫 (倉敷中央病院 小児科)
キーワード:
先天性心疾患、地域支援、家族支援
【はじめに】令和4年に文部科学省によって行われた『通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査』では、「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示す」小中学生が8.8%いると報告された。先天性心疾患を有する小児においては、心疾患に起因する身体的な社会参加の困難さに加え、神経発達症や他臓器に合併する障害のためにより一層の困難を生じうる。先天性心疾患児の医療との関りは、多くの場合新生児期・乳児期からの小児科医、小児循環器科医との関りを始まりとする。患児の抱える課題を総合的、多面的に捉えて、適切な支援につなげていくこと、必要な機関と連携を取ることが、我々に求められていることである。課題を感じた症例を例に挙げ、よりよい支援の方法につき考察する。【症例1】4歳男児、左心低形成症候群、中等度知的発達症。3歳にフォンタン型手術に到達。術後に右横隔神経麻痺や左肺動脈狭窄を合併し、術前SaO2 84.7%から術後SaO2 75.3%に低下し、在宅酸素療法が開始された。そのため術前に決まっていた福祉施設の受け入れが困難となり再度受け入れ施設を探すこととなった。受け入れ可能施設であっても在宅酸素のために母子分離が困難であったり、重症心身障害児が多く家族のニーズにそぐわなかったりし、施設決定に難渋した。【症例2】13歳女性、総動脈幹症、体肺動脈側副血管、家族性22q11.2欠失症候群、知的発達症、自閉スペクトラム症。肺血管床が不十分で心室内に右左短絡を残しており、低酸素血症が残存し夜間のみ在宅酸素療法を行っている。小学校入学時に一旦特別支援学級への入学が決定されたものの、2年進級時に特別支援学校への転校が望ましいと判断された。【まとめ】医療者が患児の課題を総合的に把握し、地域や福祉施設、教育機関と情報共有し、家族の意向も考慮した上で、患児にとってより良い環境を目指していくことが望ましい。