講演情報

[III-CPD6-3]いのちの授業による教育と医療の連携

種市 尋宙 (富山大学附属病院 高岡・地域小児保健医療学講座)
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キーワード:

教育、生命尊重、連携

教育と医療の連携の重要性に疑う余地はないと思うが、全国各地でだれでも容易に取り組めるような状況ではなく、各地域で苦労している話も聞く。演者自身は小児における脳死、臓器提供、グリーフケアなどに関わってきた経験をもとに、主に医療者を対象とした講演会を重ねてきた。そのような経緯の中で、ある学校教師から一通の手紙をもらい、一緒にいのちの授業をしませんか、との誘いが書かれていた。賛同し初めて参加したのが2017年であった。ほぼボランティアに近い状況で始まったが、生徒たちの反応や演者との意見交換は自己研鑽にもつながり、現在まで毎年1回継続して開催されている。回を重ねていく中でメディアの取材を受け、いのちの授業内容が新聞記事として紹介された。さらに、その年の新聞コンクールでは、その記事を読んで感じたことを記した子どもたちの作品がコンクールで受賞しており、二重に子どもたちの反応を知る機会を得た。まずは動くこと、積み重ねることで広がるいのちの議論の輪があることを実感した経験であった。
また、コロナ禍において、こどもたちと教育現場を守るべく、富山市教育委員会と連携する機会を得た。相互に激しい議論の中、ともに責任を背負って信頼関係を築いた。その経緯がある中で、コロナ禍後の子どもたちの健康課題に対して教育側が大きな懸念を持ち、学校現場からいのちの授業を開催してほしいと要望があった。授業全体を通して、子どもたちにいのちとは何かを問いかけ、予想を超える反応があった。今、子どもたちを取り巻く環境は生命を軽んじる風潮がある。そこに抗うことができる職種の一つが小児科医であろうと考えている。
教育と連携する契機、報酬、いのちの授業の内容と求められる結果など課題も多いが、今後の展望も合わせて教育とどのように連携していくと良いのか、ともに探っていきたい。