講演情報

[III-CPD6-4]「いのちの授業」-生老病死のウェルビーイング- ~教育現場から死生観の醸成を求めて~

佐藤 毅 (東京学芸大学附属国際中等教育学校)
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キーワード:

生老病死、死生観、校医

【背景】2025年1月,厚生労働省は2024年の自殺者数を発表した。20,268人で前年より1,569人減少した。しかし,小中高生は527人と過去最多となった。少子化の中,子どもたちの自殺が増えている。この現実にどう向き合えばいいのだろうか。その中で,「いのちの授業」がより一層重視されている。教員を志した動機の一つにいじめや自殺が減って欲しいという想いがある。その想いは年々増している。
【目的】「いのちの授業」の充実に必要なことは,医療従事者が教育現場に入りやすくなることである。そして,医療現場,教育現場と分け隔てなく,連携・協働することで社会全体のいのちに対する想像力が膨らむことを望んでいる。正しい知識を身につけ,自らの健康やいのちを守る力を育むことは,未来の社会を持続可能なものにする鍵となるはずである。その能力とはヘルスリテラシーである。その能力を育むことで,未来の社会の成熟にもつながり,そのことがいのちを大切にする文化を築く第一歩だと考える。
【方法】2000年から『生老病死』をテーマに掲げ,生と死について考える機会を提供してきた。誰もが100%経験する,生まれて・老い・病み・死んでいく全てのことを若いうちから深く考えることは,豊かな人生を過ごすうえで必要不可欠なものと考えている。2013年からは全国の小・中・高・大学へ出前授業を展開している。現在,延べ54校,約14,000名にいのちの授業を行ってきた。
【結果・考察】これまでの実践から,いのちについて我が事として考えるだけでなく,他者への思いやりの精神がより育まれることを感じてきた。そして,その広がりが社会事として社会全体の死生観が醸成につながるはずである。
【結論】本講演では,今までの経験を基に,「いのちの授業」の発展について概説する。校医の重要性や養護教諭,道徳推進教師,保健体育科教諭との連携・協働についてお示しする。