講演情報

[III-CPD8-1]ありのままの家族を理解するための理論と基本姿勢

井上 敦子 (大阪公立大学大学院 看護学研究科)
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キーワード:

家族支援、家族発達、家族システム

家族は、家族内外の変化に対してバランスを取ろうと揺れ動きながら対応している。変化に対する揺れ方は、家族のもつ力によってさまざまである。家族を支援する際には、生じている事象を家族がどのように捉え、どのように力を発揮して対処しているのか、ありのままの家族を理解していくことが重要となる。
ありのままの家族を理解するための理論として、家族発達理論と家族システム理論がある。家族発達理論は、個人の発達と同様、家族にも発達段階・発達課題があることを示している。小児循環器医療を必要とするこどもを含めた家族は、家族発達段階でいう養育・教育期にあたる。こどもの誕生や成長に応じて家族の生活や役割を調整するなどの発達課題があるが、こどもが病気と診断されることや、入院・手術に伴う意思決定を委ねられるなどの出来事が重なることで、家族のもつ力では対応しきれない家族危機を招く可能性がある。家族危機は、家族の機能を失ってしまうような状況である一方で、家族内の凝集性を高めて対応したり、家族外の資源を取り入れて新たな対処を身につけるなどによって乗り越えることができれば、家族の力を強めていくことにつながる。この家族内外の相互関係を捉える視点が家族システムである。家族を一つのシステムとして捉え、家族員同士の関係性や家族外の人々とどのように影響し合っているのかという点に着目することで、家族への理解を深めることができる。家族外との関係には、医療者も含まれている。医療者は、家族に対して説明・指導・教育などを提供することが多いが、家族は家族自身の歴史や価値観を知る家族の専門家である。家族の病気の捉えや思いを引き出しながら家族への理解を深め、病や生活上の制限があるなかでも、どのような家族でありたいか、ともに考えていく姿勢が重要である。このような家族を理解するための理論と基本姿勢を共有し、家族支援について考える機会としたい。