講演情報

[III-CSY5-1]胎児頻脈性不整脈治療薬の開発

三好 剛一 (国立循環器病研究センター 研究振興部)
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キーワード:

胎児頻脈性不整脈、医薬品開発、適応外使用

小児・成人領域では頻脈性不整脈に対して薬事承認されている抗不整脈薬(ジゴキシン・ソタロール・フレカイニドの3剤)が、2024年9月から胎児頻脈性不整脈の治療薬として保険診療で使用できることとなった。これは国内臨床試験の成績、ガイドラインへの収載、国内における使用実態などに基づき、「薬理作用に基づく医薬品の適応外使用事例(55年通知)」の審査を経て、厚生労働省より示されたものである。胎児頻脈性不整脈の治療薬については、これまで海外において薬事承認されている国はなく、保険償還が認められている事例もない。また、双胎間輸血症候群に対する胎児鏡下レーザー治療をはじめとした外科的な胎児治療では、保険適用された事例はこれまでにもあるが、薬剤を用いた内科的な胎児治療については国内初であり、胎児治療の分野において非常に大きな一歩となった。ただ、その道のりは決して楽なものではなく、世界に先駆けて国内臨床試験を開始したのが2010年で、そこから保険償還が認められるまでに、実に15年近い年月がかかっている。国内臨床試験の立案・実施、試験成績の論文化、ガイドラインへの収載、学会要望のための関連学会への働きかけ、レジストリの立ち上げなど、当該医薬品が現場で使えるようになるまでに行ってきた一連の活動について共有したい。医薬品の保険償還までの方策は治験のみではなく、条件を満たせば「薬理作用に基づく医薬品の適応外使用事例(55年通知)」という選択肢もある。ただし、当該制度では保険請求が可能となることが認められるのみで、薬事承認される訳ではなく、添付文書上は「適応外使用」のままであることに留意が必要である。今後医薬品開発を目指す研究者にはぜひ知っておいていただきたい制度であり、本発表では注意点も含めて紹介したい。