講演情報

[III-CSY5-2]川崎病急性期治療薬の開発

濱田 洋通 (千葉大学 大学院医学研究院 小児病態学)
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キーワード:

川崎病、冠動脈疾患、免疫抑制療法

川崎病の急性期治療は、1970年台のアスピリンの導入、1980-90年台の免疫グロブリン治療(Intravenous immunoglobulin :IVIG)の開発、そして2010年台にいくつかの免疫調節薬の川崎病に対するドラッグ・リポジショニングに要約されるであろう。我々は2008年から免疫抑制剤のシクロスポリンAを川崎病の治療薬として開発したのでその経緯を紹介する。川崎病の遺伝的背景が研究され、最初に発見された遺伝子バリアントがカルシニューリン・NFAT経路に関わるものであったことから、免疫細胞の炎症性サイトカイン産生調節異常が川崎病炎症の一因であることが示唆された。この細胞内経路を抑制する薬物がシクロスポリンAである。すでに他疾患において小児に投与された実績が長く、開発はPhase2から開始された。一定の効果と安全性を川崎病の少数の患者で確認し、Phase3を医師主導治験として行った。従来は年単位で投与する慢性疾患が対象であり小児急性期疾患に対する経験がないため、投与プロトコール作りがカギであった。主評価項目は川崎病の最も重要な予後である冠動脈病変に設定した。主評価項目において有意差をつけるための症例数設定を検討した。これらのキーポイントすべてが適切に設定され、KAICA trialでは有意差をもってシクロスポリンAの冠動脈病変抑制効果が示された。2020年薬事承認に至るまでの12年間とこの先の展望を概説したい。