講演情報
[III-CSY5-3]大血管ステントの開発
○富田 英, 藤井 隆成, 喜瀬 広亮 (昭和大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センター)
キーワード:
肺動脈狭窄、大動脈縮窄、ステント
演者とステントの出会いは、1996年32回日本小児循環器学会学術集会に来日されたMullins先生が、Palmazステントを抱えて札幌医科大学病院のカテ室に来られた時に遡る。ファロー術後に合併した肺動脈分岐部狭窄に対してYステントを行ったが、昼から始めて終わったのは日付が変わる頃であった。その後、国立循環器病センターに異動しステント留置にかかわったが、国内で使用できる大血管に留置できるステントはもっぱらPalmaz largeステントであった。欧米からはEV-3, Genesis XD, CPステントなどの有用性が報告され、Palmazステントを使っているの日本くらいという状況に危機感を覚え、2009年公知申請によるPalmazステントの承認を目指して、JPIC stent surveyを行ったがとん挫した。2011年AHA StatementでクラスI推奨とされた成人の血管径まで拡大できるステントの国内導入が喫緊の課題と考え、各方面と協議した結果、医師主導治験が不可避との結論に至った。当時、米国ではEV-3, Genesis XD, CPステントなど、またヨーロッパからはAndraステントが使われ始めた時期であった。各企業と交渉の結果、当時米国で大動脈縮窄を対象として医師主導治験が進行中であったCPステントを対象機器として医師主導治験を計画することした。2012年にJPICを中心としてワーキンググループを立ち上げ、肺動脈狭窄に対するCPステントの医師主導治験を行い、米国治験データと合わせて、大血管狭窄に対するCPステントの包括的承認を目指す方針となった。2014-2017年に医師主導治験を行い、2018年から行政との相談を始めたが、抄録執筆時点ではまだ承認には至っていない。この間、2023年にはついにPalmazステントが販売終了となり、国内に成人の血管径まで拡大できるステントは存在しない状態が続いている。演者の大血管ステント開発の歩みはまさに七転びであるが、この抄録発表の頃には8回目に起き上ることができることを祈るばかりである。