講演情報
[III-CSY5-6]医薬品・医療機器開発における日本小児循環器学会の取り組み
○三浦 大1,2, 小林 徹1, 高月 晋一1, 根本 慎太郎1, 山村 健一郎1, 住友 直文1 (1.日本小児循環器学会 臨床試験委員会, 2.東京都立多摩南部地域病院 小児科)
キーワード:
小児治験、治験促進活動、小児循環器疾患
【背景】小児用の薬剤には,適応外使用が多い,エビデンスが乏しい,適切な剤型が少ない,アドヒアランスが難しい,薬物動態や副作用の情報が十分でない,製薬企業へのインセンティブが乏しいなどの諸問題がある.適応外使用の解決には小児治験を行うべきであるが,製剤開発の労力,非採算性,寡少な症例数,同意取得が困難,医師が繁忙といった障壁により,実施には困難をともなう.【方法・成績】日本小児循環器学会(以下,本学会)では,臨床試験委員会を中心に,2015年から治験推進活動に取り組んできた.本学会が企業と契約して報酬を受け,プロジェクトチームが治験の各段階をサポートする.その項目は, 1)治験前:計画の立案,対象患者数の調査,参加施設の選定,当局との面談の陪席,2)治験中:会議の開催,学会員への情報提供,候補患者の紹介,3)治験後:承認に向けた支援,報告書・論文の作成,製造販売後調査などである.現在までに,8つの医薬品と3つの手術関連素材の治験に関して企業と契約を締結した.そのうち,ランジオロール,リバーロキサバン,サクビトリルバルサルタン,セレキシパグ,合成心血管パッチの5品目が小児適用を取得した.治験以外の本学会の活動としては,薬価見直し(例:ジゴキシン),禁忌解除(妊婦に対するベータ遮断薬),小児用製剤の実態調査(プロプラノロール)なども行ってきた.【考察】小児治験が奏功するためには,成人の保険適用の承認前または直後の開始,現実的な試験デザイン,最低限の侵襲が重要と考えられる.このためには,治験の計画段階から学会が積極的に関与することが望ましい.小児の薬剤の課題を解決し,患者・家族に安全かつ有効な薬剤を届けるためには,産官学の連携を強化する必要がある.次世代の発展に期待し,治験促進活動など本学会の歩みを紹介する.