講演情報
[III-OR29-03]当科における過去15年間の急性心筋炎症例の検討
○細矢 薫子, 高野 峻也, 川島 綾子, 林 真理子, 青柳 良倫, 桃井 伸緒 (福島県立医科大学 小児科学講座)
キーワード:
急性心筋炎、ウイルス性心筋炎、パルボウイルス
【背景】急性心筋炎はウイルス感染を主因とし、心臓への炎症細胞浸潤と心筋細胞障害を病理学的な特徴とする炎症性疾患である。近年、主な病因ウイルスとしてパルボウイルス(B19V)が挙げられ、2024年3月以降、EU/EEA加盟国でのB19V感染流行に伴って、急性心筋炎増加が指摘されている。当研究室では各種検体について病原微生物のPCR検査を実施し、原因の推測を行なっている。【方法】2009年から2023年までの15年間に当院で入院加療を要した急性心筋炎症例について、診療録から後方視的に情報を収集し、臨床像を検討した。心筋生検を行なっていない症例は、生化学検査および心臓超音波検査所見から臨床的に診断されたものを対象とした。【結果】対象は22症例、平均6歳(5か月-14歳)。入院病日は平均第5病日(2-16日)であったが、B19V感染症で入院中の第37病日に心筋炎を発症した1症例を認めた。4例(18%)に対して心筋生検が施行され、全例が急性心筋炎と診断された。18例についてPCR検査を施行し、8症例(44%)で原因微生物が推定された。B19Vを検査した11症例中、5症例(46%)でB19V陽性となった。その他、HHV-7が2例、HHV-6、EBV、Enterovirus、Influenza virus A、SARS-CoV-2が各1例検出された。B19VとHHV-6、HHV-7とEBVとEnterovirusの混合感染を1例ずつ認めた。治療は19症例(86%)に循環作動薬投与、14症例(64%)に免疫グロブリン投与が施行され、9症例(41%)にPCPSが導入された。予後は、当院来院時に心肺停止状態であった2例(9%)が死亡した。2例は心機能の回復が得られず心臓移植の方針となったが、内1例は血液検体から持続的にB19Vが検出され、慢性炎症性心筋症が疑われた。1例がPCPS管理中に脳出血をきたし神経学的後遺症を残した。【結論】心筋検体、血液検体のPCR検査が原因微生物の推定に有用であり、B19Vが主な原因微生物であることが確認された。病院前心停止の症例を除き、PCPS導入により生命予後は良好であった。